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買い物を助ける便利な存在。だけじゃない!暮らしを豊かにする生協の “組合員活動” とは?【地域共生社会を考えるvol.5】

高校生への奨学金制度、こども宅食おすそわけ便への食品寄贈、多様な人が集まる居場所づくり…これらは実は、本日紹介する生協(=コープ)の取り組みの一部です。

皆さんは生協にどんなイメージをもっていますか?

生協とは「消費生活協同組合」の略で、数ある「協同組合」のうちの一つ。組合員(※1)が出資金を出し合い、協同で運営・利用する組織です。組合員の生活は地域と強い関わりがあることから、おなじみの宅配、店舗や共済、福祉などの事業だけではなく、組合員のよりよい暮らしのために「組合員活動」にも積極的に取り組んでいます。
(※1)生協に加入すると組合員となり、生協のサービスを利用したり、運営に関わることができる。

組合員活動とは、組合員の自主的・自発的な活動や社会貢献活動です。助け合いの活動、交流サロン、子育て支援など各地で多様な形で広がっています。生協はこうした活動が地域社会でより広く役立つよう、さまざまな団体と連携・協力を進めています。

組合員活動と地域共生社会の考え方は、重なるところが多々ありそう。ということで、今回はコープあおもり、コープみらい、大阪いずみ市民生協の3つの生協にお集まりいただき、地域共生×生協というテーマで座談会を行いました。また、各地の生協や都道府県別・事業種別の生協連合会が加入する全国連合会である日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)にも、生協と地域の関わりについてお話を伺いました。

「地域共生社会」なんて言われちゃうと、なんだか壮大で、雲をつかむ話のような気がします。でも実は私たちの周りには素敵な取り組みをしている方々がたくさんいて、その取り組みひとつひとつが重なっていくことが、「地域共生社会の実現」につながる一歩になるのでは?そんな発想で始めた、短期連載 “地域共生社会を考える” の第5回目です。

座談会のようす。厚労省の会議室にて

商品の余剰を子育て世代へ届ける “こども宅食おすそわけ便”、組合員発の“サニタリードライブ”

―本日お集まりいただいた3つの生協の皆さんから取り組み紹介をお願いします。まずはコープあおもりさん、お願いします。

(左から)コープあおもり 組合員活動部 部長 加藤さん、宅配事業部 部長 細越さん

細越 宅配事業の中で、食品や日用品などがどうしても在庫として残ってしまうことがあります。在庫商品を有効活用できないかと考えていたときに、社会福祉協議会(※2。以下、社協)さんから、コロナ禍でこども食堂(※3)が開催できなくなっていることを聞きました。もともと社協とは、傷や大きさなどの問題で食べられるけど供給できない農産品を活用してもらう取り組みで連携していたこともあり、今度は在庫品を活用した「こども宅食おすそわけ便」に取り組むことになりました。2020年のことです。(※2)全国の各地域に拠点をおく社会福祉活動の推進を目的とした組織。(※3)こどもが一人でも行ける無料または低額の食堂。家族揃ってご飯を食べることが難しいこどもたちへの共食の機会の提供ほか、食育、地域交流の場づくり等、さまざまな目的で実施される。

こども宅食おすそわけ便とは、東北の生協事業連合から各生協に定期的に割り振られる食品やトイレットペーパーなどの在庫品の一部を、青森県社協の取り組み「こども宅食おすそわけ便」を通して子育て世帯へ無料で提供するものです。自宅へ届けることもあるし、指定場所に取りに来てもらうこともあります。社協によると ”対象を限定すると、本当に困っている人が足を運びにくい“ そうで、ハードルを下げて誰でも受け取れるような打ち出し方をして、支援が届くような工夫をしてくれています。

商品が子育て世帯へ届くまでの流れ

加藤 こども宅食おすそわけ便では、生協の商品だけでなく、企業さんから集まった物品も社協で一緒にパッケージにしてお渡しします。その袋詰めの作業には、コープあおもりの組合員さんもボランティアで参加してくれています。

こども宅食おすそわけ便の商品を袋詰めしたもの
フードパントリーのようす

社協との関わりをもったことで、新たな活動にもつながりました。組合員さんから、生理用品が買えずに困っている人のために、”サニタリードライブ“、つまり家庭にある生理用品等を集めて、必要な人に寄付する取り組みをやってみたい、という声があがりました。生協で集めることはできるけど、配る仕組みが必要だよね、ということで社協やNPOと連携して実現することができました。こども宅食おすそわけ便でほかの団体とつながったことがきっかけで、2022年は新たな活動に挑戦できた思い出深い年でした。今後は、多様な人が集まるの居場所づくりにも取り組みたいと思っています。

サニタリードライブの取り組み報告

組合員参加型・高校生への奨学金制度と、コロナ禍での食の支援

―続いて、コープみらいさんお願いします。今回参加している生協の中では最もエリアが広い生協ですね。

コープみらい 組織推進 統括部長・組織運営部長 江畑さん

コープみらいは、もともと、千葉、埼玉、東京にあった3つの生協が合併してできた組織です。ほかの生協と同じく、宅配事業、店舗事業などに加えて、組合員活動を行っています。

私たちコープみらいは、事業活動の状況に左右されることなく、独立して社会的な取り組みを継続できるように「コープみらい財団」を設立しました。

財団の大きな事業のひとつとして、高校生への奨学金制度があります。経済的に厳しい状況の学生が、いわゆるブラックバイトをせざるを得なかったり、卒業後の奨学金返済が重荷になっていることを知り、我々ができることとして無償の奨学金事業をすることにしました。大学生向けには、比較的いろいろな支援があるので、あえて対象を高校生としました。

仕組みとしては、組合員さんから “奨学金応援サポーター” を募り、一口100円で、月々の商品代金の引き落とし時に一緒に引かせていただきます。そこで集めた寄付を元に、学生1人に対して月1万円×12か月×3年間で計36万円の奨学金を支給しています。実は私もサポーターなのですが、例えばそのお金で定期券を買ってあげられたとか、サッカーのスパイクを買ってあげられたとか、そういうこどもたちや保護者の声を聞くと、嬉しいですね。わずかな額ではありますが、誰かの役に立っていることを実感できます。

コープみらい奨学金

また、コープあおもりさんと同じように、昨年度、コロナ禍において生まれた活動もあります。実は、外出自粛の影響で内食需要が高まった結果、生協の利用も増えました。一方でさまざまな事情で困っている方々もいたので何かお役に立てないかと。そこで、生まれた余剰(利益)を地域に還元するため、生活に困窮している方へのお米の寄贈を行いました。千葉、埼玉、東京のそれぞれの本部が、つながりのある支援団体さんに5kgのお米を約4万袋寄付しました。人が生きていくために必要なことであり、コープの主力事業でもある「食」というテーマで支援ができました。このような活動ができたのは組合員さんが賛同してくれたからこそです。

お米贈呈式

みんな “で” まちのリビングをつくるプロジェクト

―最後に、大阪いずみ市民生協さん、お願いします。

(左から)大阪いずみ市民生協 地域活動推進部 部長 野村さん、馬谷さん

野村 私たちが行っている ”みんなで居場所をつくる” プロジェクトをご紹介します。2019年に大阪いずみ市民生協では、“「つながりのあるまちづくり」への参加方針” を定めました。“生協も地域の一員としてその役割を果たしていきたい” という決意表明です。時を同じくして、生協の小型店舗が閉店することになりました。立地が良く、目抜き通りにあったので、居場所づくりにチャレンジしてみることにしました。その第一号がまちのリビング すきいまです。ポイントは、みんな “で” 居場所をつくるということです。

まちのリビング すきいま

馬谷 私は、居場所づくりの現場に入りながら、素敵な発言をしている人の声を拾って、人と人とをつなげたり、皆で一緒に場をつくっていく過程を楽しんでいくことの大切さを伝えたりしています。
といっても、要は一緒に、わいわいしながら “あんなんしたら面白いんちゃうん” という関西のノリで楽しみながらやっています。

すきいまに訪れる人々

「イベント疲れ」の一歩先は日常をつくること

―大阪いずみ市民生協さんの「すきいま」の写真に皆釘付けですね。色んな世代の方が集まっているし、何より楽しそう…。まず、何を目指してこのプロジェクトに取り組んだのか、教えて頂けますか?

大阪いずみ・野村 「みんなの居場所」って言ってしまうと、つくったら終わりのような感じがしますが「みんなで居場所をつくる」ということだと、永遠に続いていくんですね。人も変わりますし、その時々でその場所の在り方も変わってくるんじゃないかなと。住民の方には、その場をつくっていくプロセスを楽しみながら参加してもらえるように意識しています。

また、すきいまは組合員だけじゃなく、地域の方が誰でも参加できるようにしています。場所は生協が開放するので、組合員や地域住民の方でどんどん使ってくださいね、と言っています。
これまでの組合員活動って、生協の器の中でやってきた感じがしているんです。でもそうすると、やらされ感が出てきたりしますよね。地域住民の方と一緒にやるということは、色んな価値観が集まるということでもあるので、コーディネートするのも難しいのですが、考え方を変えていかないと持続していかないと思っています。

気軽に参加できる場づくりをしているのは、生協の組合員活動のあり方を変えるという意味合いのほかに、社会的にも意義があると考えています。
行政や社協と話していると、相談窓口に来る前の日常の状態でつながっておくことが大事だということがわかります。公的な窓口に相談に来るのは、本当に困ってからという場合が少なくないらしいのです。でも、ふだんからつながっておけば、困りごとを抱えていても誰かと話すことで少し楽になったり、こういう行政の制度・支援があるよとつなぐことができたり、助け合えることがあると思うんです。
子育て世代や高齢者の孤立という社会的な問題についても、少しでも役に立てる場所になれると良いなと思っています。
…と難しいことも言いつつ、写真を見てもらったらわかるとおり、何より本当に楽しんでもらえる場をつくることを第一に考えて、試行錯誤しながらやっているところです。

―具体的には、組合員や地域住民の方は、どんな風にすきいまを活用しているのでしょうか?
大阪いずみ・野村
 みんなで一緒に何かやらないとだめとか、決まりがあるわけではありません。一人でレコードを聞いて帰る方もいるし、自分のつくった川柳を飾って、それを入れ替えて帰る方がいたりと、本当に好きなように使ってくれています。
あと、SDGsを意識しているので、ものを持ち込んでくれることも多いです。例えば、自宅で眠っているおもちゃを持ってきてくれる人がいれば、それが壊れていたときに修理できる方がいたり、こどもは使えるおもちゃと使えないおもちゃを選別してくれたり。

今までは、イベントをやって周知しよう、と考えることが多かったんですけど、新型コロナでそれができなかったのが、かえって良かったなぁと思っています。それまでは一生懸命イベントをやりすぎて、組合員さんも職員も疲れきっちゃうこともあったんじゃないかな。燃え尽きちゃうというか。その発想を転換させて、日常を楽しめる、好きになってもらえるような場所にしていこうと考えています。

実は、2022年に大学の先生や学生さんにも協力してもらって、コンセプトブックをつくりました。
町全体を大きな家と見立てて、ここを “まちのリビング” にしようと。みんなが気軽に寄ってきて、好きなことをしたり、おしゃべりしたりできる場所にしたいんです。

居場所というハコをどう管理しよう、どう施設を開けよう、という視点ではなく、人の動きに着目して、どう人をつなげていったら盛り上がるのか、ということに視点を置いていますね。

コンセプトブック「いばしょができたら人生が輝きだした件について」冊子の表紙

コープみらい・江畑 すごく素敵ですね。貸し会議室みたいなスタイルだと、どうしても使う人も限られてくるんですよね。どうやったら色んな人にうまく使ってもらえるんだろう…。コープの施設だと思われると、組合員だけしか使えないのかなと思われたり、近寄りにくい雰囲気があるのでしょうか。

コープあおもり・細越 特定の人だけが毎日来るような場所だと、外から見ると何をやっているのかわからなくて入りにくいというのはありそうです。ここはそうではなくて、色んな人がいて、楽しそうに料理をつくっていたり、こどもが遊んでいたりそれぞれが好きなことをやって、純粋に楽しそうです。

大阪いずみ・馬谷 最初は特定の方が中心でもいいと思います。他の人が来たときに、「おいでおいで」と声をかけて、巻き込んでいくことが大事です。

コープあおもり・細越 うちで宅配をしている高齢者の方の中には、一人暮らしで誰とも話をしないで一日終わる方もいらっしゃって、組合員担当が商品を届けに行っておしゃべりすると「ありがとう」と言われたりするんですよ。すきいまには、高齢者の方が気軽に来ることができて、今日も来てくれて元気だったなって、見守りにもなりますよね。

大阪いずみ・馬谷 たしかに、安否確認になっているかも。毎日すきいまの前を通る方の姿が見えないと、あれ、今日見てない?という話になったり。90代の方がミシン貸すよ、と言ってくれたときは「運んでもらうのも危ないし、スタッフで取りにいこうか」となったり。ゆるやかに気にかけ合う関係ができつつあります。

コープあおもり・加藤 ここにいたら、自然と世代間の交流ができそうです。

大阪いずみ・馬谷 最初はやはりシニア層の方が多く来てくれていました。活動を続ける中で、子育て層にももっと来てもらいたいなということになり、居場所を既に利用してくれているママさんと、ボランティアスタッフとが、こども服の交換会を企画・開催してくれました。その交換会に来ることをきっかけに初めてすきいまに足を踏み入れてくれた方がいて、振り返ればそれが、利用者の年齢層が広がったことにつながっているかなと思います。
幼稚園のこどもをもつお母さんたちが、90代の方にミシンを教えてもらいたいというような、世代間の交流も起きていたりします。

急ぐべからず。妄想と遊び心。面倒くさいことをあえてやろう

大阪いずみ・野村 実は、この場を立ち上げるにあたって、もともとお付き合いのあった大阪芸術大学の先生にアドバイザーになっていただき、教えてもらったことがあります。それは、買うのは簡単だけど、あえて面倒くさいことをやった方がいいということ。

この建物ができたとき、整えたのは内装とキッチンだけなんです。家具は一切置いていませんでした。ボランティアのお父様で塗装業をされていた方がいて、壁に塗料を塗っていけば黒板ができるということを教えてもらって、皆でつくりました。同じく机と椅子も、木を切って、とんかちを使って、大人もこどもも一緒になって作りました。場をつくるプロセスを楽しんでもらうことは、その場所が自分のものだという感覚につながるのです。「面倒くさいこと」を通して、皆で話しながらちょっとずつ完成させていくことが大事です。

壁に塗料を塗って黒板をつくるようす

大阪いずみ・馬谷 形にすることを急いでしまうんですよね。例えば、今、次の拠点作りをする中で、のれんをつくってみようということになっています。発注しちゃうんじゃなくて、どうする?というところから始めると「うちにシーツあるよ」となり、形はどうする?手縫い?そしたら次、裁縫道具をもって集合!となって、今ちくちく縫っているところです。

―コープあおもりさんも今後、居場所づくりに取り組みたいと仰っていましたが、話を聞いていかがですか。

コープあおもり・加藤 自分の中では既に、いろんな妄想が広がっています。実は、組合員さんが集まる場として、新型コロナ前にひとつ事務所をつくったんです。完成したとき、地域の方がものすごく喜んでくれました。こんなに立派な事務所ができて嬉しい、活用しなくては、と言ってもらえたことは、生協に勤めてきた中で一番嬉しい出来事でした。でもその後すぐコロナ禍に入ってしまい、居場所として機能させられずに今に至ります。
なんだかその時の気持ちをまた思い出させてもらって、やっぱりあの場所で居場所づくりできるよねと思い直して、今とてもワクワクしています。

コープあおもり・細越 強制力があると持続しないので、ゆるい面をもってやっていくのが良いのだなと、勉強になりました。ただ、生協が責任をもって場を提供する上での安全面や、誰がどんな役割をもって運営していくのかは悩ましいですね…。

大阪いずみ・野村 施設を管理しようと思うと制約やルールを設ける必要がありますが、あくまでも生協は場の提供をする、ということにしています。ゆるやかな信頼関係で成り立っている部分はありますね。
運営は、組合員の方や地域の方にボランティアで入ってもらっています。また、すきいまのほか2か所の居場所を含めて、計3か所に、馬谷さんがコーディネートすることを意識してサポートしています。

コーディネーターを中心に運営することもできますが、そうなるとその人がいなくなった場合、また一から場づくり・人材育成をしなくてはいけなくなります。だから各自のできる範囲で、横並びで関わってもらうことで、場を回していくことにチャレンジしているところです。スタッフとして雇って仕事としてお願いすることで、「お金をもらっているから行かないと」となるとちょっと違うんですよね。誰かが引っ張っていくわけではなく、人が代わっても持続できるような場所にしたいなと。今、悩みながらつくっているところです。

あとは、ルールを作り出したら面白くなくなっていくという話を聞くんです。決まりごとを作ると遊び心がなくなってしまうのだそうです。こうなると、加藤さんの言っているような “妄想” ができなくなる。そこは少し意識していますね。みんなで妄想しながら、とにかく楽しいことをやってほしいというように。

大阪いずみ・馬谷 あくまでも日常があり、イベント会場じゃないことは大事ですね。基本的にお部屋を専有で貸すことはありません。共有するような形で使います。自分だけの空間にせずに、みんなでつくるということ。でも、決まっていることと言ったらそれくらいですかね。

困りごとの本質を知る

-コープみらいさんは、居場所づくりはされていますか?

コープみらい・江畑 コープみらいでは、みらいひろば(※4)という場をもっています。みらいひろばも、組合員だけでなく、誰でも参加できるサードプレイスに、という思いで運営しています。

使い方としては、みらいひろばに来ている方ご自身が興味のあるテーマで、勉強会をしたり、イベントをしたりしています。例えば、お料理会が開かれたり、消費者被害の問題について学ぶ時間をつくったり。

そこの運営で力を発揮してくれているのが「ブロック委員」さんです。コープみらいには、3都県を22のブロックに分けた「ブロック委員会」(※5)があります。そこで約300人の委員さんが中心となり、地域の組合員活動を推進してくださっています。みらいひろばでも、組合員や地域の方から出てきたテーマを形にするときに、ブロック委員さんの力が欠かせません

コロナ禍で、オンラインのみらいひろばの活動も生まれました。以前、みらいひろばに来てくれていた方が、家庭の事情で海外にいるのですが、オンラインで参加してくれました。地域を越えたねと言って盛り上がりました。リアルに集まるということだけではなく、オンライン上で気兼ねなく集まれる居場所というのも面白くて、今後も取り組んでいきたいなと思っています。

オンラインみらいひろばのようす。
(※4)コープみらい“みらいひろば”はだれでも参加できる集いの場。くらしにかかわるさまざまなことやコープのことを楽しく学び交流できる場として、地域で毎月開催しています。
(※5)ブロック委員はコープみらいの組合員。「地域と人をつなぐ、みんなの応援団」として、組合員の立場で、みらいひろばでの活動等を通じたコープみらいのファンづくりを進めています。

―コープみらいでは、みらいひろばに参加している方やブロック委員さんを通じて組合員の声を拾っているのですね。色んな声がある中で、実際に組織として取り組むことをどのように決めているのでしょうか?

コープみらい・江畑 大事にしてるのは、例えば奨学金であれば、どういう思いでその制度がほしいと言っているのか、要望の裏側を知ろうとすることです。これが欲しいということだけではなく、なぜ?なぜ?と突き詰めて考えていくようにしています。

私も最初は組合員さんに「この商品がほしいんだけど」と言われたときは、その背景まで把握してこなかったんですね。でもよくよく聞くと、実はこどもがアレルギーを持っていて…とか理由があるわけです。
全ての要望に応えられるわけじゃないけど、その方が本当に困っていることを知ることができたら、別の形で応援できることもあるかもしれないので、本質を見極めるように心がけています。

外に踏み出すことで生まれた活動・つながり

―コープあおもりさんでも、組合員の要望でサニタリードライブを始めたという話がありましたね。

コープあおもり・加藤 生理用品のサニタリードライブは、最初、組合員理事の方から提案があったんです。でも、コロナ禍で活動制限があったこともあり、考えすぎて動けなかった期間が長かったんですね。そこで、どうなるかわからないけど思い切ってやってみよう!ということにして、まずは店舗に回収場所をつくってみました。そうしたら思いがけず、組合員さんからの反応がすごく良くて、やっぱりこういうのは生協らしい取り組みだねと言っていただけたんです。わざわざ店舗で生理用品を買って寄付してくれる方もいました。

そのうちに、回収に参加してくれていた組合員さんから、今度は大人用の紙オムツ等もやってほしいという声があがりました。生理用品については、NPOと連携して配布していましたが、大人用紙オムツは回収した後、誰にどうやって届けたら良いのか思い当たる先がありませんでした。

そこで、組合員理事の方と一緒に、近隣の社協さんに相談しに行ってみました。こども宅食おすそわけ便で県の社協さんとはやりとりしていましたが、市の社協さんに訪問するのは初めてでした。正直、最初は尻込みしましたね。敷居が高いんじゃないかと。でも訪問してみたら、とても前向きに捉えて頂きぜひ一緒にやりたいと言ってもらえました。昨年は計4回取り組みを行いました。今年度も同じくらい実施できるよう計画しています。

サニタリードライブ 回収のようす

―組合員や地域から拾ったニーズについて、生協単独では実現するのが難しいときにほかの団体にアプローチしているのですね。活動を広げていくために工夫していることを教えてください。

コープあおもり・加藤 サニタリードライブは特に、つながりがつながりを呼んでいった感じがしますね。
スクールソーシャルワーカー(※4)の方から「父子家庭のこどもが、自分が生理だとお父さんに言えずに困っている」と、こども食堂を運営する団体に相談があったそうです。その際にこども食堂の方が、コープあおもりがサニタリードライブやろうとしていることを思い出してくださり、連携が始まりました。私たち職員がそういうつながりをどんどん作っていくのが大事だなって思います。
(※4)児童・生徒の問題に対し、保護者や教員と協力しながら問題の解決を図る福祉の専門職。学校等で活動する。

ほかにも、宅配事業の取引先である産直農家さんに、経済的に生活が苦しい家庭のお子さんに学習支援している団体とつながった話をしたら、ぜひうちにあるリンゴジュースを持って行ってくれないか、と言ってくれて支援が広がったり、サニタリードライブを始めた話を別の地域の会合で話したら、ウチでも何かやれることをと言って、宅配と一緒にチラシを撒いてみようということになったり。活動が、新たな活動を生んでいったんです。これは昨年やっていて、嬉しかった経験ですね。

やっぱり一歩踏み出すことが大事なんですよね。居場所づくりについては、まだ踏み出せていないので、一歩踏み出す勇気を持たなきゃいけないなと改めて思いました。

地域での活動に欠かせない、コーディネートする力

―皆さんの話からは、地域の方々がもっている点と点のニーズをどうつなげるのか、生協がそのためにどう動いていけるのかが大事なのかなと感じました。

大阪いずみ・野村 加藤さんがこども食堂でスクールソーシャルワーカーさんと出会ったように、地域に入っていくとつながりができることは割と多いと思うんです。
例えば、私たちは食を通じてもっと活動を広げていきたいな思っているのですが、社協さんと話をしていて、高齢男性の栄養バランスが気になる方がいる、という話になったりするんですね。じゃあ何か一緒にできることはないかとつながっていくことが往々にしてありますね。生協はもっと地域に出ていかないと、地域の要望も拾えないだろうと思います。

コープあおもり・加藤 コープあおもりは、まだまだ宅配のイメージが強くて、組合員活動の認知度はそう高くないと思っています。何かあった時に、生協に相談してみようと思ってもらえるように、もっと活動を知ってもらわなくてはと思いました。

―ニーズを拾うだけじゃなくて、それを解決してくれる人と出会えるかもしれないということも皆さんの話から見えてきました。

コープあおもり・加藤 先日、地域の小・中学校から、SDGsの学習に参加してほしいと依頼が来ました。初めての試みだったのですが、試行錯誤して準備して、こどもたちと一緒にゴミの問題の話をしてきました。当時は、私たちが自分たちでなんとかしなくてはいけないと思って頑張りましたが、あとになって私たちの周りには講師をできる方もたくさんいたことに気が付きました。人をつなげる動きもできるのだろうと思います。

コープみらい・江畑 どこの生協も、組合活動に参加してくれる人、推進してくれる人の担い手が見つからなくなってきているという話があると思います。地域にこういうニーズがあって何かやりたいけど、自分たちでやらないといけないから大変だ、だから出来ない…となってしまうのですね。

ですから、ボランティアでやってくれるブロック委員に全部引っ張ってもらうのではなく、地域の中にいる、やりたい・できる人たちとどう一緒にやっていくのか、考えていかなくてはいけない段階だと思っています。先日内部でも話し合ったのは、できる人ができる時にできることをやるという、サポーターのような仕組み。そういうものができれば、取り組みも広がるし、ブロック委員にはコーディネートする役割で活躍していただけます。

大阪いずみ・野村 コーディネートする力、大事だと思います。リーダー的な人がいて回していくのではなくて、コーディネートできる人が横並びで増えると、良い場になっていく気がします。

大阪いずみ・馬谷 コーディネート力は、実は誰でももてる力なのではないか、という考えのもと、今わたしたちは学習会もしています。コーディネートの視点をもつ人が増えることで、生協の活動もそうですし、社会全体がもっと、みんなにとって居心地のよいものになるのではないかとも思っています。

―今日お話を聞いて、宅配など事業活動だけでなく地域の中での活動を大事にされていることを改めて感じました。よりよい活動をするためには、どんどん地域に出て行って、つながることが大事だというのは、生協だけでなく、行政や企業にも通ずることだと思います。

日本生協連インタビュー

最後に、今回の座談会の企画にも携わって頂いた日本生協連の小池さんにも、全国的な状況や、生協と地域の関係についてお話を聞きました。

日本生活協同組合連合会 渉外広報本部 渉外部 小池さん

―日本生協連は、どんな組織なのでしょうか?
会員向けの商品の開発・供給、会員生協の支援や、全国組織としての社会的取り組みを行っています。具体的には、CO・OP商品の開発を行い全国の生協に供給する事業や、会員生協の意見をとりまとめ、国に提言を行う活動に取り組んでいます。また、各地の会員生協の良い取り組みを水平展開するための情報提供など、各地の生協の事業・活動の支援も行っています。

―そもそも生協は、なぜ地域での活動に力を入れているのでしょうか?
地域共生社会という言葉ができる前から、生協では、地域で組合員活動を行っています。組合員活動は、組合員が抱える悩みや困りごとをみんなで解決していくという仕組みでもあるんです。地域の悩みや困りごとを誰かに解決してもらうのではなく、自分たちで何とかしたいという意識が昔から根付いている結果だと思います。
かつて専業主婦が多かった時代は井戸端会議で思いや困りごとを共有していたと思います。”井戸端会議から、組合員活動を通じてやりたいことを実現” できるのは生協の強みです。

―地域と連携した取り組みの全国的な状況を教えてください。
例えば、全国の生協が自治体と進めている「地域見守り協定」があります。全国の市町村73%と協定を結ぶまでに拡大しています(2023年2月時点)。生協の宅配や夕食宅配は、基本的に毎週同じ曜日の同じ時間に、同じ担当者が商品を届けているため組合員の異変に気付きやすいです。「ポストに郵便物がたまっている」「お届けした商品に手が付けられていない」などの異変を感じた際、事前に取り決めた連絡先に連絡・通報を行います。

他にも、包括連携協定を締結している市町村も広がりつつあります。包括連携協定には、災害時の物資支援や見守り活動に加えて、地域のくらしの安全、消費者行政の推進、食育や子育て、環境保全など、さまざまな分野での連携が含まれます。

各地で地域の実情に合った活動ができることは生協の特徴です。先ほどお話ししたように各地の良い活動事例を広く情報共有することで、全国的な活動に拡大する事例もあるんですよ。

今は社会の大きな変革期です。例えば、保育や介護など家庭や地域のつながりで担っていたことを社会で担うように変化してきています。ニーズが増えることで、公的支援やサービスが拡大していますよね。このような社会変化に伴う組合員の思いの変化を丁寧に拾っていくことが大切だと思います。

座談会・インタビューを終えて

座談会に参加した厚生労働省の4名の職員から、インタビューを終えて

皆さん試行錯誤しながらも、そこにやりがいや面白さを感じ、自分達の活動を楽しそうに話す姿が印象的でした。どの活動にも共通しているのは、組合員の「主体性」を大切にして取り組んでいることです。生協にとっては当たり前のことかもしれませんが、自分たちでよりよい地域を創るんだという純粋な想いを組合員さんも職員さんも共通して持っていることは、生協の大きな強みであると感じます。
この職に携わるまで、私自身、生協は宅配などの商品事業を行っているところというイメージが先行していましたが、今回お話を伺って、改めて、生協の根幹は組合員活動であり、助け合いの組織なのだと実感しました。生協に携わる行政職員として、こういった組合員活動の意義や楽しさを多くの人に知ってもらえるような機会を創っていきたいと思いました。(消費生活協同組合業務室 宇賀神)

今回お話を伺う中で感じたのは「みんなで」という言葉。「みんなで」何かをしようとすると時間もかかるし、結構煩わしいこともある。でもそれがよいのかな。いつの間にかお互いを知り、自分たちのできることで何かを「我が事」としてつくりあげていく。だからこそ、ゴールというものはなく、どんどん集まってくる「みんなで」いつまでも深化させていけるのかなと思います。あっ、これ持続可能な社会をつくる基なのかも!?
で、「みんなで」の中に生協の職員も入って楽しんで取り組みをしている。これがお互いに「支え合う」ということかなと思います。誰かが何かをやるという一方向の動きではなく、自然な形でお互いがお互いを支えている。実は地域共生社会の大切なエッセンスだと思います。
今回の取材を通じて「地域で共に生きる(活きる)」が様々な形で展開されていることが勉強になりました。というか、私自身も話を聞くだけで「わくわく」してきました。
「みんなで」地域共生社会を実現していきましょう!(地域共生社会推進室・犬丸)

生協の組合活動はサニタリードライブや居場所づくりなど多岐にわたり、いずれも組合員自らの主体的な活動によって成り立っています。今回、お話を聞いて皆さんの地域に対するアツイ想いが印象的でした。
また、活動を継続させる、さらには発展させるためにはコーディネートする力は地域で欠かせないということ。何か新しいことを始めるときは様々な課題がありますが、私は行政職員として、生協団体を含む多くの方々の「地域でこんなことがしたい」という想いを具現化するために、人と人・団体をつなぐことができる人間でありたいと改めて感じました。
今後も生協の地域貢献活動に期待し、私も皆さまと一緒に地域共生社会の実現に向けて頑張っていきます!(地域福祉課・尾﨑)

今回の企画は、生協の成り立ちを考えたときに、地域共生社会で伝えていることと重なる取り組みがたくさんあるだろう、各地の生協に話を聞いてみたい!ということからスタートしました。実際に話を聞いて、組合員の「やってみたい」にチャレンジできる組織だということがよくわかりました。根底に流れる “組織文化” を活かしつつ、時代に合わせた活動のあり方…イベントではない日常の居場所づくり、オンラインの場づくり、暮らしに困っている方への支援といった新たなテーマに取り組んでいらっしゃいます。単なるサービスの提供者と消費者というだけではない関係づくりができる生協の強みを活かして、きっとこれからも地域になくてはならない存在として活躍されるのだろうと期待に胸が膨らむ座談会でした。(地域共生社会推進室・宍倉)

さて、全5回にわたってお届けした短期連載「地域共生社会を考える」は、本記事をもって終了します。ご覧いただきありがとうございました!またどこかで皆さまにお会いできる日が来るかもしれません。
今後は、地域共生社会のポータルサイトで情報発信を行います。こちらもご覧ください。

■noteの連載「地域共生を考える