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家庭でできる食中毒予防!第4回:秋の味覚、ジビエとキノコ

こんにちは。厚生労働省 健康・生活衛生局 食品監視安全課 リスクコミュニケーション係です。

すっかり朝晩が涼しくなり、秋の味覚が楽しめる季節になりましたね。

前回はお肉の食中毒についてお届けしました。
今回は、ジビエキノコの食中毒予防についてです!


ジビエをおいしく楽しむために

・ジビエの生食は危険です

狩猟期間は秋から冬の終わりにかけてあるため、「ジビエ」という言葉をよく聞くようになりました。

ジビエとは、シカ、イノシシなど、狩猟の対象となり食用とする野生鳥獣、またはその肉のことです。

ジビエは、牛や豚などの家畜と異なり、飼料や健康状態などの管理が行われていないため、どのような病原体を保有しているのかわかりません。そのため、ジビエを生や生焼けの状態で食べるのは危険です

ジビエによる食中毒の原因となるウイルス、細菌、寄生虫は次のようなものがあります。

E型肝炎ウイルス
E型肝炎ウイルス(HEV)は、急性肝炎(まれに劇症肝炎)を引き起こすウイルスです。調理の段階でも、血液を介して感染するおそれがあるため、皮膚の傷からウイルスが体内へ入ることのないよう注意する必要があります。
潜伏期間は15~50日で、悪心、食欲不振、腹痛、褐色尿、黄疸などの症状が現れます。
妊婦さんは重症化(劇症肝炎に移行)する割合が高いです。

腸管出血性大腸菌
腸管出血性大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在し、ジビエからも検出されています。潜伏期間は3~8日で、発熱、腹痛、下痢(水様便、血便)などの症状が出ます。
重症化すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの合併症を発症します。

旋毛虫(トリヒナ)
旋毛虫(トリヒナ)とは、旋毛虫症(トリヒナ症)の原因となる線虫(寄生虫)です。冷凍に強いので、冷凍しても死にません。
トリヒナ症の症状は、筋肉痛、発熱、悪寒、浮腫、好酸球増多です。最悪の場合には、感染4~6週後に呼吸麻痺で死に至ります。


・ジビエによる食中毒を防ごう

このように、いろいろな病原体を保有している可能性のあるジビエですが、食中毒の予防の方法は第3回で紹介したお肉の食中毒予防と同じです。

まずは温度管理。お肉についている菌が増えないように、お肉は必ず冷蔵庫で保存しましょう。また、お肉はビニール袋や容器に入れて他の食品に肉汁などがかからないようにします。

次に、お肉についている細菌やウイルスの二次汚染を防ぐために、
お肉を扱ったときは、手をしっかり洗いましょう。
お肉を扱った調理器具は、よく洗浄、消毒しましょう。
消毒は熱湯がオススメです。可能なら、「肉・魚」と「野菜」用に別々の包丁とまな板を用意すると安心です。
お肉を焼く箸と食べる箸は別々にしましょう。
お肉を焼く際に使用する箸やトングなどには、お肉についていた病原体がついてしまいます。

そして最後に、

お肉をしっかり焼いて、病原体をやっつけましょう!

病原体がお肉の内部まで入り込んでいる可能性があるので、表面だけでなく中心部までしっかり火を通すことが大切です中心温度75℃で1分間以上加熱してください。
ジビエは冷凍することも多いと思いますが、冷凍保存したものも中までしっかり焼きましょう


食中毒予防を心がけて、ジビエを安全においしく楽しみたいですね!


秋はキノコの季節

・ちょっと待って!それ毒キノコかも

毎年、夏の終わりから秋にかけてキノコが多く発生するため、毒キノコを食用のキノコと誤って食べて食中毒になる事例が確認されています。

食用キノコと間違えやすい、代表的な毒キノコを二つ紹介します。
また、キノコは地方によって呼び方が異なることがあるため(地方名)、そちらもあわせてご紹介します。

まずはクサウラベニタケです。

 クサウラベニタケの地方名は、めじんなかせ (岩手県・青森県)、にたり(埼玉県・前橋市)、あぶらいっぽん(前橋市)、ささしめじ(金沢市)、にせしめじ(秋田・青森地方)、うすすみ、さくらっこ、どくよもだけ、どくしめじ(秋田県)、いっぽんしめじ(岩手県・新潟県・富山県・長野県)です。

こちらのツキヨタケも、食用と間違われやすい毒キノコの一つです。

地方名は、つきよ、くまべら、わたり、どくもたし、どくきのこ(岩手県)、つきよんだけ、つきよだけ、どくあかり、きかりきのこ、ひかりだけ(秋田県)、ひかりごけ(新潟県)、くまべら、こうずる(富山県)、ぶなたろう(福井県)です。

・キノコにまつわるちょっとした話

キノコに関して、こんな話をきいたことがありませんか?
「茎が縦に裂けるキノコは食べられる」

実はこれ、迷信なんです!

キノコについては、さまざまな誤解や言い伝えがあります。
例えば、「毒キノコは派手な色をしている」も、迷信です
先ほどご紹介したクサウラベニタケツキヨタケのように地味な色をした毒キノコもあります。また、派手な色のキノコの中にも食べられるキノコがあります。

他にも、

【誤解】虫が食べるキノコは人間も食べられる
虫やナメクジは毒のあるドクツルタケも平気で食べます!

【誤解】毒キノコはナスと一緒に煮ると毒が消える
科学的根拠はありません!

【誤解】毒キノコは塩漬けすれば食べられる
ドクツルタケなどテングダケ属の毒キノコは、塩漬けしても毒は消えません!

というものがあります。これらすべて誤解です

昔から言われているからといって、正しいとは限りません。
迷信を信じて毒キノコを食べてしまわないように注意してくださいね。


・絶対に、採らない、食べない、売らない、人にあげない!

毒キノコによる食中毒を防ぐために、重要なことは4つです。

食用のキノコだと確実に判断できないキノコは、採らない、食べない、売らない、人にあげない。

気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、これは第1回でご紹介した「有毒植物」による食中毒を予防する方法 と一緒です。

有毒植物と同じように、キノコも
「山で採ったキノコを食べたら食中毒になってしまった」
「自宅の敷地内で採ったキノコを調理したら食中毒になってしまった」
「食べられるキノコだと思い、調理・販売したら購入した人が食中毒になってしまった」
「人から譲り受けたキノコを食べたら食中毒になった」

などの事例が発生しています。

食用のキノコにそっくりな毒キノコは身近にあります。
自分は大丈夫、と思わずに、食べられるキノコかどうか必ず確認して、少しでも怪しいと思ったら、採らない、食べない、売らない、人にあげない!

キノコを食べて体調が悪くなったら、すぐに病院で診察を受けてくださいね。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
次回はノロウイルスについてお届けする予定です。

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注釈・出典等
1ジビエ(野生鳥獣の肉)の衛生管理(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00021.html
 
2 野生鳥獣肉(ジビエ)に関するQ&A(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000365098.pdf
 
3 トリヒナの概要(食品安全委員会HP)
https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/H21_25.pdf
 
4 寄生虫による食中毒にご注意ください(食品安全委員会HP)
https://www.fsc.go.jp/sonota/kiseichu_foodpoisoning2.html
 
5 毒キノコによる食中毒に注意しましょう(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kinoko/index.html
 
6 毒キノコによる食中毒の注意喚起について(薬生食監発0824第1号 令和5年8月24日)(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/content/001139097.pdf
 
7 自然毒のリスクプロファイル:クサウラベニタケ(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000142692.html
 
8 自然毒のリスクプロファイル:ツキヨタケ(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000142114.html
 
9 キノコの食中毒について(厚生労働省食品安全情報X)
https://twitter.com/shokuhin_anzen/status/1586991365996482560?s=46&t=zWOArWOXY6b8Ze-OQBqDEA


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