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家庭でできる食中毒予防!【第1回】

こんにちは。厚生労働省 医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全企画課 リスクコミュニケーション係(通称:リスコミ係)です。

リスコミ係では、食の安全に関する取り組みの一環として、国民の皆さんへの情報提供や意見交換会・イベント等の企画立案、食品の安全確保に向けた取り組みや食中毒予防に関するパンフレット・リーフレットの作成等を行っています。

 Twitterアカウント「厚生労働省 食品安全情報」でも、食品の安全に関する情報を発信しています。


突然ですが、皆さんは食中毒が毎年どのくらい起きているか知っていますか?

厚生労働省の統計によると、食中毒は、年間約1,000件発生しています。

厚労省の食中毒統計資料を基に作成
 

ただ、この数字は保健所が調査をして食中毒と確定したものであり、実際にはもっと多く発生していると考えられます。

 食中毒というと、飲食店で起きるイメージが強いかもしれませんが、報告された食中毒事例のうち発生場所が家庭となっているものは 約14~19%で、これは飲食店の次に多い数字となっています。

家庭での食中毒の発生がそんなに多いなんて、と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。一体何が原因で、そんなに家庭での食中毒が起きているのだろうと不安になった方もいらっしゃるかもしれません。
でも、安心してください!食中毒はちょっとした工夫で防ぐことができます。

 皆さんが安心しておいしい食事ができるように、この連載「家庭でできる食中毒予防!」では、気をつけてほしい食中毒の予防方法をお知らせしていきます。

一回目の今日は、春に気をつけてほしい「有毒植物」、それから、季節を問わず気をつけてほしい「ハチミツ」の食中毒についてご紹介します。


「有毒植物」の誤食を防ごう

・その植物、有毒かも?

春先から初夏にかけては、家庭菜園に精を出したり、山菜採りに行かれたりする方もいらっしゃるかもしれません。自分で育てた野菜や、収穫したての野菜のおいしさは格別ですよね。

実は、観賞用植物や野草など私たちの身の回りにある植物には、有毒な成分を含むものがあります。有毒な植物の中には食べられる植物にそっくりなものもあるため、食用の植物と誤って食べてしまい、食中毒になる事例が毎年確認されています。
野菜や山菜などの食べられる植物によく似た有毒植物をいくつかご紹介します。

こちらは、ヤマイモにそっくりな、グロリオサの根です。グロリオサは赤と黄色の少し変わった形の花を咲かせる観賞用植物です。

上がヤマイモ。下がグロリオサです。こうして並べると、似ていることがよく分かると思います。

こちらの観賞用植物のイヌサフランも、葉や球根がさまざまな植物に似ているので注意が必要です。春は葉をギョウジャニンニクやギボウシ、山菜などと間違える食中毒が起こりやすく、秋になると球根が出回るので、ニンニクやタマネギ、ジャガイモなどと間違えられることが多いです。

スイセンスノーフレーク(スズランスイセン)も誤食を起こしやすい植物の代表です。間違いやすい植物として、ニラやノビル、タマネギなどがあります。

・採らない!食べない!売らない!人にあげない!

では、有毒植物を誤って食べないようにするためには、どうすればいいのでしょうか。

ポイントは、間違いなく食用だと判断できない植物は、絶対に「採らない!」「食べない!」「売らない!」「人にあげない!」の4つです。
これから、それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。

まず1つ目、有毒植物を「採らない!」について。

観賞用植物を家庭菜園や畑の近くに植えると混ざってしまうことがあるので、観賞用植物は畑や菜園から離れた場所で明確に区分けして栽培する。何を栽培しているのかすぐに分かるように、植物の種類や名前を書いた札を立てる。庭や畑に何かを植えたら、家族にも伝える、などが大切です。

食用として植えた覚えのない植物にも気をつけてください。植えた覚えがなくても、種がどこからか飛んできたり、以前に植えたものが再び生えてくることもあります。

過去に、自宅の庭に生えていた植物の球根をミョウガだと思って食べたところ、腹痛や嘔吐など食中毒の症状が出て病院に搬送され、食べ残りを鑑定したところ、この球根はイヌサフランの球根だった、という食中毒の事例もありました。

植えた覚えのないものは、絶対に採らないよう気をつけてください。

また、山菜に混じって有毒植物が生えていることがあります。山菜狩りなどをするときは、一本一本よく確認して採り、調理前にもう一度確認しましょう。

2つ目、有毒植物を「食べない!」について。

確実に食べられる植物か、料理する前や食べる前によく確認してください。有毒植物には、香りが違ったり、あるはずの粘りがなかったり、強い苦みやえぐみがあるものがあります。見分けに迷ったとき、少しでもおかしいと思ったときは、食べないでください。

また、子どもや認知機能の低下している方が誤って口にしてしまわないように、観賞用植物を簡単に手の届く範囲で栽培しない、球根を放置しないことも重要です。有毒植物の中にはイヌサフランのように、球根がタマネギやジャガイモによく似たものもあります。

最後に、3つ目と4つ目、「売らない!」「人にあげない!」について。

食用として販売用に採取した植物や、人にあげた植物が、実は有毒植物だったという事案があります。例えば、山でニラと間違ってスイセンを採取し、直売所でニラとして販売。これを購入して食べた人が食中毒になってしまった。自宅の畑で栽培していたスイセンの葉をニラと勘違いして調理し、人に提供したところ、食べた人が嘔吐や下痢などの食中毒症状を訴えた。

というようなことがありました。

確実に食べられる植物と判断できないものは、売ったり、人にあげたりしないようにしましょう。野草などを食べて体調が悪くなったら、すぐに医師の診察を受けてください。

続いては、季節を問わず気をつけてほしい「ハチミツ」による食中毒の話です。

「ハチミツ」による食中毒に注意

・ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから

ハチミツのパッケージに「1歳未満の乳児には与えないでください」という注意書きを見たことがありますか?

これは1歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べることによって「乳児ボツリヌス症」にかかることがあるためです。ハチミツには「ボツリヌス菌」という菌が潜んでいることがあります。ボツリヌス菌は、土壌中などに広く存在している細菌です。

ボツリヌス菌が食品などを介して口から体内に入ると、大人の腸内では、腸内細菌がボツリヌス菌をやっつけてしまうため、通常、何も起こりません。

一方、赤ちゃんの場合、まだ腸内環境が整っていないため、腸内細菌がボツリヌス菌をやっつけることができず、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出し、便秘・ほ乳力の低下・元気の消失・泣き声の変化・首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こすことがあります。

乳児ボツリヌス症はほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあります。

日本では1986年に初めて報告され、2020年までに42件確認されています。なお、報告された42例はすべて1歳未満です。
1歳以上の方にとっては、ハチミツはリスクの高い食品ではありません。

・ハチミツを使った食品にも気をつけよう

気をつけなければいけないのは、ハチミツだけではありません。

「ハチミツを使った食品」のパッケージに「この食品はハチミツを使用しています。1歳未満の乳児には与えないでください」という注意書きを見たことがある方もいるかもしれません。

ボツリヌス菌は、熱にとても強い芽胞を形成するので、通常の加熱や調理では死にません!
赤ちゃんを「乳児ボツリヌス症」から守るために、1歳未満の赤ちゃんに「ハチミツ」「ハチミツ入りの飲料・お菓子」などの食品は与えないようにしましょう。


最後までお読みくださり、ありがとうございました。この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

次回は、暖かくなるとますます増えてくる「細菌性食中毒」についてです。

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注釈・出典等
1 グロリオサによる食中毒の発生について(高知市公式HP)

2 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:グロリオサ(厚生労働省HP)

3 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:イヌサフラン(厚生労働省HP)

4 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スノーフレーク(厚生労働省HP)

5 ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。(厚生労働省HP)

6 ボツリヌス症とは(国立感染症研究所HP)