「聞こえ」の不調はさまざま。その主な原因と、予防・対策をお伝えします!
こんにちは。障害保健福祉部 企画課です。
皆さんに「聞こえ」について知っていただくために始めた連載企画。第1回では、音が聞こえにくくなることによる影響や予防についてお伝えしました。
「聞こえにくくなる原因にどんなものがあるか、イメージしてみてください」
加齢によるものを思い浮かべた方が多いのではないでしょうか。しかし、聞こえの不調には、実は年齢以外にもさまざまな原因が考えられます。
2回目となる今回は、「ヘッドホン(イヤホン)難聴」「突発性難聴」「加齢性難聴」「騒音性難聴」について、それぞれの原因や特徴などをお伝えします。
ヘッドホン(イヤホン)難聴
(執筆:健康・生活衛生局 健康課 協力:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
ヘッドホン(イヤホン)難聴とは
ヘッドホンやイヤホンで大きな音を長時間連続して聞き続けることによって、聞こえにくくなったり、耳鳴りがしたり、耳が詰まった感じがしたりすることを「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」といいます。
音の振動を脳に伝える役割を持つ有毛細胞が傷ついてしまうことが聴力低下の原因です。
ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)はじわじわと進行し、いったん聴力が失われるとその回復は難しく、残念ながら治療薬はまだありません。
そのため、何よりも予防が大切です。
どうやって予防するの?
大音量・長時間の使用を避けるために、以下のことをこころがけてください。
・可能な限り音量を小さくしましょう
WHOの推奨する限度は、大人は80dB以下、子どもは75dB以下で、それぞれ1週間に最大40時間です。
・音量を上げ過ぎないために、遮音性の高いヘッドホンやイヤホンを使いましょう
・音量と視聴時間をモニターして、長時間の使用を避けましょう
・少なくとも、1時間に1回、10分程度は耳を休めましょう
【遮音性の高いヘッドホンやイヤホン】
イヤーパッドの素材や構造で周囲のノイズを軽減したり、デジタル信号処理で消したい音を打ち消したりする工夫がされているヘッドホンやイヤホンもあります。周囲の騒音を抑えてくれるので、音量を過度に上げる必要がなくなり、耳への負担を軽減できます。
※周囲の騒音を遮断する機能はさまざまであり、安全性に配慮し、自分に合うものを選んでください。
突発性難聴
(執筆:健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 協力:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
突発性難聴とは
突発性難聴は、突然、左右の耳の一方(ごくまれに両方)が聞こえにくくなる疾患です。
音をうまく感じ取れない難聴のうち原因がはっきりしないものの総称で、幅広い年代に起こりますが、特に働き盛りの40~60歳代に多くみられます。
有毛細胞がなんらかの原因で傷つき、壊れてしまうことで生じる疾患で、「なんらかの原因」は、有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や、ウイルス感染などがあると考えられていますが、まだ明らかになっていません。ストレスや過労、睡眠不足などがあると起こりやすいことが知られており、糖尿病が影響しているともいわれています。
どんな症状なの?
前日は問題なかったにもかかわらず、朝起きてテレビをつけたら音が聞こえにくい、あるいは電話の音が急に聞こえなくなるなど、前触れなく突然に起こります。
難聴の程度は人によって異なり、まったく聞こえなくなる人もいれば、耳鳴りや耳がつまった感じの症状だけの人もいます。そのため、後者では難聴に気づくのが遅れてしまうことがあります。聞こえたり聞こえにくくなったりという聞こえの変動を繰り返す症状はありません。
突然音が聞こえにくくなったら、できるだけ早く病院へ
突然音が聞こえにくくなったと思ったら、なるべく早く(できるだけ1週間以内、遅くとも2週間以内に)耳鼻咽喉科に受診するようにこころがけてください。症状が出てから治療開始までに時間がかかると治りにくくなる可能性があります。
加齢性難聴
(執筆:国立長寿医療研究センター 佐治直樹氏)
加齢性難聴とは
加齢によって有毛細胞が減少したり、音の情報を脳へ伝える経路が障害されたりすることが原因で生じる難聴を「加齢性難聴」といいます。
高い周波数の音が聞こえにくくなり、会話によるコミュニケーションが困難になって、社会参加に支障をきたすことがあります(社会的孤立といいます)。また、抑うつ症状の原因になり、認知症のリスクになることもわかってきました。
どんな症状・影響があるの?
緩やかに進行するため、難聴の初期は自分では気づかないことが多いです。
テレビの音量が以前より大きいとか、インターホンやリモコン、電子レンジなどの電子音の聞こえにくさが日常生活での気づきとなります(以下は、症状や影響の例です)。
どのように対策するの?
「聞こえにくい」と思った方は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
加齢性難聴と思っていたら、耳垢(みみあか/じこう)が詰まっていたり(耳垢塞栓)、中耳炎など別の病気が見つかったりする場合もあります。これらの場合は、適切に対処すれば症状の改善が期待できます。
加齢性難聴の程度によって、補聴器の導入が推奨される場合もあります。
導入初期は、補聴器の調整(フィッティングといいます)が必要なため、自己判断で購入せずに、まずは補聴器相談医の資格がある耳鼻咽喉科医に相談することが推奨されます。
補聴器購入の費用助成制度を設けている地方自治体もあるので、お住まいの地方自治体が該当しているかどうか、購入前にお店に問い合わせるのもおすすめです。
高齢の方が補聴器を導入する場合、視力低下や手先の動きが悪くなることで、補聴器の装着が難しかったり、もの忘れのある高齢者の場合、補聴器を紛失したりすることもあります。補聴器を導入する際には、ご家族の方も一緒に補聴器の話を聞くとよいでしょう。
騒音性難聴
(執筆:安全衛生部 労働衛生課 協力:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
騒音性難聴とは
主に、職場で工場の機械音や工事音などの騒音にさらされることで発症する難聴を、「騒音性難聴」と呼びます。「大きな音ってどのくらい大きな音?」「長時間って具体的に何時間ぐらい?」など、気になる方もいらっしゃるかと思います。以下の図をご覧ください。
職場における騒音源の騒音レベルが例示されています。騒音性難聴の観点からは、85dBが対策上の一つの目安となっています。
これは、日本産業衛生学会が公表している等価騒音レベル(A 特性音圧レベル)による許容基準において、1日のばく露時間を8時間とした場合における等価騒音レベルの許容基準が85dBとされていることを踏まえたものです。
この基準を超えた騒音に長時間さらされ続けると、騒音性難聴になるリスクが高まります。
騒音障害防止のためのガイドライン
厚生労働省では、2023年4月に「騒音障害防止のためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を改訂しました。このガイドラインは、職場の騒音による労働者の健康障害を防止するため、事業者が取り組むべき措置を書いたもので、以下で簡単にご紹介します。
騒音障害防止に限らず、労働衛生対策を進めるにあたっては、労働衛生管理体制の整備、作業環境管理、作業管理、健康管理そして労働衛生教育が重要です。このガイドラインでは、騒音障害防止に関して具体的に事業者が取り組む内容について示しています。
気になることがあれば、「耳鼻咽喉科」を受診しましょう
どの原因による難聴も、はじめは自分では気づかないことが多いですが、早めに対応することで進行を遅らせられる可能性があります。
「いつもと聞こえ方が違う」と感じたり、周りの方の変化に気づいたりしたら、まず一度お近くの耳鼻咽喉科にご相談ください。
「難聴啓発プロジェクト 聞きにくさを感じている方へ」
(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
Hear well, Enjoy life -快聴で人生を楽しく
(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
ヘッドホン(イヤホン)難聴 - e-健康づくりネット
(厚生労働省)
騒音障害防止対策
(厚生労働省)