家庭でできる食中毒予防!これから増える「細菌性食中毒」に気をつけて【第2回】
こんにちは。厚生労働省 医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全企画課 リスクコミュニケーション係です。
一気に暑くなって、季節は梅雨を迎えました。
気温も湿度も高いこの時期に気をつけなければいけないことがあります。
そう。食中毒です!
前回の記事では「有毒植物」と「ハチミツ」の食中毒予防についてお届けしました。
「確実に食用と分からない植物は、採らない!食べない!売らない!人にあげない!」
「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」
この2つがポイントでしたが、覚えていますか?ご覧になっていない方や「なんだったっけ?」と思った方は、ぜひこの記事を読んでみてください!
二回目の今回は、暑くなると増えてくる「細菌性食中毒」の予防についてお届けします。
覚えてね。食中毒予防の三原則!
これからの季節、食品が傷むのがどんどん早くなりますよね。
食品が腐っていれば、見た目やにおいなどから食べたら危ないと分かりますが、食中毒を起こす細菌の中には、見た目やにおいでは分からないものも多いので注意が必要です。
細菌による食中毒は、原因となる細菌が食べ物に付着し、体内へ侵入することによって発生します。
細菌による食中毒を防ぐためには、
① 細菌を食べ物に「つけない」
② 食べ物に付着した細菌を「増やさない」
③ 食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」
という「食中毒予防の三原則」が大切です!
それでは、食中毒の原因となる細菌を具体的に3つご紹介します。
どんどん広がる二次汚染に注意
「サルモネラ属菌」という名前を聞いたことがありますか?
サルモネラ属菌は鶏・豚・牛などのさまざまな動物の腸管や、河川、湖などの自然界に広く生息しています。乾燥に強いという特徴を持っている菌です。
サルモネラ属菌による食中毒は鶏肉、卵やその加工品が原因となることが多いのですが、調理器具や人の手指を通して「二次汚染」が発生し、思わぬものが原因で食中毒になるケースもあります。
この二次汚染という言葉、あまりなじみがないかもしれません。
例えば、サルモネラ属菌がついていた肉を切った包丁やまな板などの調理器具を洗わずにそのまま野菜を切ると、野菜にサルモネラ属菌が付着します。これを二次汚染と言います。
二次汚染は調理器具だけでなく、調理している人の手指でも発生します。サルモネラ菌がついている肉に触った手を洗わずに他の食品を触ると、触った食品がサルモネラ属菌に汚染されます。見た目では分かりませんがこうして、汚染がどんどん広がっていきます。
サルモネラ属菌の潜伏期間は12~48時間で、激しい腹痛や下痢、発熱、嘔吐などの症状が現れます。また、サルモネラ属菌は動物の腸管を好むので、症状がなくなっても体内に留まっている(保菌)ことも多く、食中毒を広げてしまう原因になります。
サルモネラ属菌による食中毒を防ぐために大切なのが、先ほど紹介した「食中毒予防の三原則」。食中毒菌を「つけない、増やさない、やっつける」です。
まずは「つけない」。
手をしっかり洗いましょう。調理前はもちろん、調理中も二次汚染を防ぐためにこまめに洗ってください。手だけでなく、調理器具もしっかり洗ってください。特に生肉を扱った調理器具は、よく洗浄、消毒してください。可能なら、「肉・魚」と「野菜」用に別々の包丁とまな板を用意すると安心です。
次に「増やさない」。
サルモネラ属菌が増えないように肉・卵は冷蔵庫で保管してください。
また、卵を生で食べる際はヒビが入っていない生食用等の表示がなされた賞味期限内の卵のみにして、卵は割ったまま保存せず、食べる直前に割るようにしてください。
最後は「やっつける」。
食べ物についた菌を加熱でやっつけましょう!
サルモネラ属菌は熱に強くはないので、食品を十分に加熱することで食中毒を防ぐことができます。調理する際には75℃以上で1分以上、加熱するようにしてください。中まで火が通っていることが大切なので、しっかりチェックしてくださいね。
菌が死んでも毒は残る?
食中毒予防の三原則の3つ目「やっつける(加熱)」は、一見万能に見えますが、それだけでは食中毒を防ぐことが難しい菌がいます。
例えば、「黄色ブドウ球菌」という食中毒菌です。
黄色ブドウ球菌は人や動物の手指などの皮膚、粘膜などに常在している菌で、健康な人の20~30%が保有していると言われています。化膿菌の一つでもあるので、手指の傷や傷が化膿している部分に多く存在しています。
黄色ブドウ球菌は、増殖するときにエンテロトキシンという毒素を出します。黄色ブドウ球菌食中毒は、菌でなく、この毒素が原因で食中毒症状を引き起こします。
黄色ブドウ球菌の潜伏期間は1~5時間(平均3時間)で、吐き気や嘔吐、下痢などの症状が現れます。ブドウ球菌自体は十分加熱すれば死滅しますが、エンテロトキシンは熱に強く、黄色ブドウ球菌をやっつけたとしても、食中毒の原因になるエンテロトキシンは残ってしまうのです。
そのため、黄色ブドウ球菌による食中毒対策は、黄色ブドウ球菌を食品に「つけない、増やさない」ことが重要になります。具体的には、調理前にしっかり手洗いをすること、手や指に傷がある人は食品用のビニール手袋を利用するなど食品に直接触らないようにすること。また、調理中に髪の毛や皮膚に触らないようにしましょう。すぐに食べない食品は冷蔵庫で保存するなどして、菌が増えるのを防ぎましょう。
この黄色ブドウ球菌、かつて「おにぎり」で猛威を振るっていました。温かいご飯を素手で握ること、食べるまで常温で放置したことが原因だと考えられています。
近年、黄色ブドウ球菌による食中毒は減少傾向にありますが、油断してはいけません。おにぎりに限らず、サンドイッチやいなり寿司など、ご家庭で手作りのお弁当を作るときは注意してくださいね。
油断禁物!煮込み料理!
「ウエルシュ菌」という菌もまた、しっかり加熱すれば大丈夫!とは言えない菌の一つです。
ウエルシュ菌はヒトや動物の腸管内、土壌など自然界に広く分布しています。ウエルシュ菌による食中毒はカレーやシチュー、煮魚、煮物、麺のつけ汁、スープなど、肉や魚、野菜を使用した煮物や汁物、大量に調理する食品で多く見られます。
熱に強い「芽胞」という固い殻を作って休眠状態となっていたウエルシュ菌は、しっかり加熱調理をしたとしても生き残ります。これらの食品を調理後、室温に放置し、ゆるやかに温度が下がってくると、目を覚ましたウエルシュ菌が芽胞から抜け出し(発芽)、増殖します。
ウエルシュ菌の潜伏期間は6~18時間(平均10時間)で、腹痛や下痢などの症状が現れます。
ウエルシュ菌は酸素の少ない状態を好むことから、鍋底まで酸素が届きにくい大鍋や深鍋で調理する食品が原因になることが多く、一度にたくさんの人が食中毒になることもウエルシュ菌による食中毒の特徴の一つです。
ウエルシュ菌による食中毒は、多くの菌量を摂取することで発症するため、ウエルシュ菌を「増やさない」ことが大切になります。
しっかり加熱したから大丈夫!と安心せず、調理した食品はなるべく早めに食べることが大切です。また、調理済みの食品を保存する場合は室温で放置せず、はやく温度が下がるように容器に小分けにして、冷蔵庫で保存するなど、ウエルシュ菌が増殖する温度(12~50℃)で長く置かないようにしましょう。食品を温め直すときは、酸素に触れるようよくかき混ぜながら中まで十分に加熱して、早めに食べるようにしてください。
春から夏にかけて多くなる「細菌性食中毒」の代表的なものをご紹介しました。
細菌を食べ物に「つけない、増やさない、やっつける」。
食中毒予防の三原則をぜひ覚えてください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
次回は「お肉の食中毒」についてです。
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注釈・出典等
1 食中毒(厚生労働省HP)
3 食品安全委員会季刊誌「食品安全」第23号(2010年(平成22年)7月発行)寄稿:委員の視点(食中毒予防は、手洗いと二次汚染対策が重要)[PDF:400KB]