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「性のマイノリティ」を含め多様な人々が活躍できる社会の実現に向けて、まずは認知&理解から


「とびラボ」で学んだこと

厚生労働省には、「とびラボ」(とびだす “R” ラボ)という、職員が自主的に研修を企画できる制度があります。職員の現在の所属・担当分野を超えた、新しい出会いや学びを応援する仕組みです。

「とびラボ」の活動報告は、noteにも記事掲載していきますが、今回の投稿は、「とびラボ」企画『「すべての」ひと、くらし、みらいのためにーマイノリティの存在を踏まえた政策立案に向けてー』で学んだことから派生した、スピンオフ企画です。
※この「とびラボ」企画自体の活動報告noteは別途準備中!しばらくお待ちください!

この企画では、4回の講義の後、最終回はワークショップを開き、厚生労働省職員として何ができるかを話し合いました。
施策立案時にマイノリティの方の存在を意識しよう、まずは厚生労働省を性別、性的指向、性自認にかかわらず、働きやすい職場としていこう等々さまざまな意見が出ましたが、その中で、まずは、マイノリティの存在を認知することや、今現在、厚生労働省がどういう取り組みをしているのかを知ることが出発点として欠かせないのではないかとのやりとりがありました。

実は、厚生労働省は所掌が広く、担当したことのない分野のことを知らないこともままあり、ワークショップの中で、厚労省の取組を参加者で確認したりもしましたが、今回初めて知った!という話も多くありました。

そんな話から、厚生労働省職員でさえ知らないのだから、職員以外の皆さんにはもっと知られてないのではないか、こうした取り組みは厚生労働省として伝えていきたいことなのに、伝わっていないのはもったいない!担当外ではあるけれど、こうした気付きを得た者として何かできることはないか・・・

「そうだ!noteに投稿しよう!」ということで、今回、厚生労働省が性のマイノリティの方々の存在を踏まえた上で、今現在どういう取り組みを行っているのかをご紹介するべく、記事を執筆しています。

まずは認知・理解してもらうことから

さっそく取り組みのご紹介! と、いく前に、そもそも、「性のマイノリティ」ってなんだろうというところからお伝えしたいと思います。概念紹介です。概念を知ることで、見える景色が違ってくることがありますよね。一つの言葉を知ることによって、世界の色彩が一つ増える、解像度が上がるという体験。「学ぶ」楽しみ・醍醐味はそこにあると思います。
ここでは「性のマイノリティ」について学んだり考えたりする際、知っていると理解がスムーズになる用語を10個ピックアップしました。まずは一読いただければ幸いです。

理解促進のための「10個の用語」

1.「マジョリティ」
直訳すると「多数派」。特定の時代・環境・状況において「社会的に優位を占める集団」のことを指して用いられることがあります。必ずしも数として多数かどうかは問わず、例えば、江戸時代は、士農工商の身分制度のもと、人口的には少数である武士が「マジョリティ」(=支配者層)であり、幕府(政府)の方針は、「マジョリティ」である武士の意見を強く反映したものとなっていた、と分析する見方もできます。

2.「マイノリティ」
直訳すると「少数派」。特定の時代・環境・状況において「社会的に劣位におかれる集団」のことを指して用いられることがあります。マイノリティは、しばしばマジョリティからの差別・抑圧を受ける存在として表現されます。先ほどの江戸時代のたとえで言うと、村の掟に逆らったり秩序を乱したりしたと判断された人や、村において弱い立場にあるとされた人は「マイノリティ」として、他の村民(=マジョリティ)から無視されたり、嫌がらせを受けたりした(いわゆる「村八分」)と表現できます。

3.「性的指向」
「性的指向」は、ある人が、誰を恋愛または性愛の対象とするかを表す言葉です。以下のように、人によって性的指向のあり方はさまざまです。
・自分と同じ性別の人を好きになる人もいれば、違う性別の人を好きになる人もいますし、
・相手の性別を意識せず、その人を好きになる人もいます。
・誰にも恋愛感情や性的な感情を持たない人もいます。
よく「性的嗜好」と混同されますが、「性的嗜好」は、ある人の行動の対象や目的に関する性的な好みの傾向を指します(例えば、「がっしりした手が好き」「眼鏡が好き」などがこれに当たります)。

4.「性自認」
「性自認」とは、自分の性別についての認識のことをいいます。生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性が「女性」であり、自分のことを「女性」だと考えている場合、生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と性自認が一致しているわけですが、そのような人を「シスジェンダー」といいます。
一方で、生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と、性自認に違和感を抱いたり、一致しなかったりする人もいます。こうした人を「トランスジェンダー」といいます。

5.「カミングアウト」
自身の性的指向や性自認について他者に伝えることを「カミングアウト」といいます。カミングアウトするかどうかは、本人の自由意志によるべきであり、カミングアウトしようとするのを止めたり、逆にカミングアウトを強制することは不適切です。
カミングアウトを受けた場合は、落ち着いて話を聞き、受けとめることが大事だと言われています。職場での困りごとなどを相談された場合には、誰に伝えているのか、誰かに伝えてよいのかを確認しておくことも重要です。

6.「アウティング」
本人の同意なく、その人の性的指向や性自認に関する情報を第三者に暴露することを「アウティング」といいます。性的指向・性自認という機微な個人情報を意に反して明かされることは本人にとって非常に苦痛になりうる(強い不安感や緊張感を強いられる)行為であり、同僚などからカミングアウトされた場合等に、たとえ善意であっても、本人の同意なく、その情報を第三者(他の人事担当者、配属先や異動先などを含む)に伝えてしまうことは、アウティングに該当するため注意が必要です。

7.「LGBT+」
「LGBT」とは、以下の言葉の頭文字をとったもので、シスジェンダー(生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と性自認が一致している人)・ヘテロセクシャル(自分とは違う性別を好きになる人)が「性的マジョリティ」である現代社会において、「性的マイノリティ」となる人たちのことを広く指す総称です。総称としての意味合いを明確化するため、「+」を付けて「LGBT+」とすることもあり、この記事ではそちらを用いています。
L レズビアン:女性を好きになる女性
G ゲイ:男性を好きになる男性
B バイセクシュアル:男性と女性を好きになる人
T トランスジェンダー:生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と性自認が一致しない人
(※)このほかにも、パンセクシャル(相手の性別を意識せず、その人を好きになる人)やアセクシャル(誰にも性的な感情を持たない人)など、様々な性のあり方が存在します。

8.「プライド月間」
6月は世界的に「プライド月間」(LGBT+の権利について啓発を促す月間)とされています。これは、6月がアメリカでLGBT+の人々の権利獲得運動である「ストーンウォールの反乱」が起きた月であることに由来しています。

9.「レインボーフラッグ」
6色(赤、オレンジ、黄、緑、青、紫)のレインボーフラッグは、LGBT+コミュニティの多様性を表現したもので、LGBT+ の尊厳を象徴し、支援や連帯の気持ちを示す旗です。プライド月間には、世界各地でレインボーフラッグがはためきます。

10.「アライ」
英語の「ally(味方)」から来た表現で、LGBT+のことを理解し、支援しようとする人のことです。例えば、企業が「アライ宣言」を出したというニュースを時々見かけますが、これはその企業がLGBT+に対する理解・支援の姿勢を打ち出したことを意味します。

厚生労働省における取り組み紹介

では、最後に、厚生労働省における現時点での取り組みのご紹介です!興味関心湧きましたら、ぜひ関連情報を更にチェックしてみたり、「性のマイノリティ」について考えてみたりしてください。
この記事が、「性のマイノリティ」について、そして「性のマイノリティ」以外にも、社会のさまざまな側面で存在する「マイノリティ」について、思いを馳せるきっかけとなりましたら幸いです。

※相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことは、パワハラに該当する場合があります。職場におけるセクハラには同性に対するものも含まれます。
性的指向・性自認に関連する労働問題、パワーハラスメントを含めたいじめ・いやがらせについては、総合労働相談コーナーで、そしてセクシュアルハラスメントについては、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)でご相談を受け付けています!
その他、生きづらさを感じている方について、一般的な生活上の悩みも含めた電話相談窓口を設置しています(よりそいホットライン)。
一人で悩まず、ぜひご相談をお寄せください!

性別・性的指向・性自認に関連する取り組み

・局をまたぐ取り組み

【医政局 障害保健福祉部 老健局】
性的指向・性自認にかかわらず、医療、介護、障害福祉等のサービスを必要とする方が適切なサービスを確実に受けることができるよう、自治体向けの全国会議等を通じ周知(平成29年度~)。虐待を受けた方に対して、必要に応じて社会福祉施設への入所措置等を行う際に、性的指向・性自認を含む当事者の多様な特性、意思や人格を尊重した適切な措置が講じられるよう周知を実施。

【職業安定局 雇用環境・均等局】
男女の均等な機会及び待遇の確保の徹底、男女間の賃金格差の解消、女性の就業継続や再就職支援、ワーク・ライフ・バランスの推進等に向けた取り組みを実施。

【地方課 職業安定局 雇用環境・均等局】
性的指向・性自認に関連する労働問題の相談先として総合労働相談コーナーを周知するとともに、労働局職員がLGBT等に関する理解を一層深めるため、全職員を対象とした研修を実施。

・局ごとの取り組み

【医薬・生活衛生局】
宿泊施設において、性的指向や性自認等を理由に宿泊の拒否をしないよう、適切な配慮を求める通知を発出(平成30年1月31日付け)。

【職業安定局】
公正な採用選考のため、事業主向け啓発パンフレットに「LGBT等の性的マイノリティの方など特定の人を排除しない」旨を記載し、厚生労働省ウェブサイト(公正な選考採用を目指して)に掲載。

【雇用環境・均等局】
* 職場におけるハラスメント対策については「あかるい職場応援団」へ
・男女雇用機会均等法に基づくセクハラ指針において、「性的な言動」であれば、被害を受ける方の性的指向や性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクハラに該当する旨を明記。

・パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務の新設等を内容とする改正労働施策総合推進法に基づく指針において、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動等をパワハラ該当例として明記。

・上記内容を記載したパンフレットやリーフレットを作成し、厚生労働省ウェブサイトに掲載。

・職場における性的指向・性自認に関する正しい理解を促進するため、性的指向・性自認に関する企業の取組事例等を調査する事業を実施。調査結果等をまとめた報告書・事例集・リーフレットを作成・公表し、周知。

・妊娠や出産、育児休業、介護休業を理由にしたハラスメントを防止。

・解雇等に関する労働相談があった場合には、総合労働相談コーナーで適切に対応するとともに、相談員に対し性的指向や性自認に関する正しい理解を促すように指示

【子ども家庭局】
・若者の性などに関する健康相談支援サイト「スマート保健相談室」において、性や月経に関すること等について誰もが分かりやすい情報の提供に努めている。また、都道府県等に設置されている性と健康の相談センターが性に関する悩み等について相談を受け付けている。・婦人保護事業の見直しに伴う困難な問題を抱える女性を支援するための新たな制度の構築に向けた検討を加速するとともに、性暴力被害者等が実態に即した支援を受けることのできる効果的な支援の在り方等を検討中。

・若年女性を対象に、婦人相談所等の公的機関と民間支援団体とが密接に連携し、夜間の見回り・声かけ、インターネット上での相談などのアウトリーチ支援や居場所の確保、相談対応、自立支援等の支援を実施。

【社会・援護局】
よりそいホットラインでは、一般的な生活上の悩みをはじめ、生活困窮者、DV被害者等社会的な繋がりが希薄な方々の相談先として、24時間365日無料の電話相談窓口を設置するとともに、必要に応じて対面による相談や相談者が各専門機関に相談する際の同行等の支援を実施。セクシュアルマイノリティについての年間相談件数(令和2年度)は 26,893件(全相談件238,527件の約11%)。

【障害保健福祉部】
都道府県・指定都市に設置している精神保健福祉センターにおいて、性同一性障害を含めた精神保健福祉全般にわたる相談を実施。

【保険局】
被保険者証の取り扱いについては、医療保険制度全体の統一的な対応として、性同一性障害等やむを得ない理由があると保険者が判断した場合には、性別を裏面のみに記載することや、戸籍名を裏面に記載した上で通称名を記載する等の表記方法の工夫をして差し支えない旨の通知を発出。

(投稿者:(とびラボ)「マイノリティの存在を踏まえた政策立案に向けて」企画担当委員一同)

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