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繰り返される考えや行動―強迫―で悩んでいませんか?~こころの宅配便、第4便~

「鍵を締め忘れ泥棒に入られるのではないか」
「汚れた物に触れて病気になるのではないか」
 
これらは誰の心にもふと浮かんでおかしくない考えですが、
その考えが苦痛に感じられるほど1日に何度も浮かび、
それによる確認や手洗いの繰り返しでふだんの生活に支障が生じるようになると、
「強迫性障害」の可能性があります。
 
このような考えや行動で苦しまれている方の数は、実際に医療機関を受診する方の数よりはるかに多いと言われています。
治療をしっかり行えば、学校や仕事、日常生活で本来のあなたの力を再び発揮できるようになります。
おひとりで悩まずに、ぜひお近くのこころの専門家に相談してみませんか。

(中尾智博、精神科医・九州大学大学院医学研究院精神病態医学)

強迫性障害の発症年齢の違い

(斎藤万比古「子どもの強迫性障害 診断・治療ガイドライン」
より樋口らの調査結果を用いて作成)

強迫性障害には、同じ考えがぐるぐるとめぐって頭から離れない「強迫観念」と、その強迫観念から生じた不安にかきたてられて行う「強迫行為」といった2つの症状があります。それらの症状が、「不合理」「やりすぎ」「無意味」と分かっていてもやめられず、本人や周囲の人たちの日常生活に影響が出ることがあります。
また、10代から20代で発症しやすいとされ、男性は10代前半、女性は20代以降の発症が多いと言われています。

厚生労働省では、精神障害を有する方やメンタルヘルス上の課題を抱えている方を含め、誰もが安心して自分らしく暮らせる社会になるよう取り組みを進めています。そして、自分のこころを大切にできるような、こころの不調があるときに安心して相談できるような、さらに、周りの人にこころの不調があるときに、自然にあたたかく接することができるような、そんなつながりのある社会を目指しています。そのためには、こころの不調や病気について、実際にそうなったときに感じる気持ちも含めて、理解を広げていくことも大切です。
こうした取り組みの一環として、「こころの困りごと」を抱えている方に向けた専門家からの言葉をお届けする企画を始めています
 
第4便は、精神科医の中尾智博先生からいただいた、こころの困りごとを抱えておられる方に伝えたい言葉をお届けしました。
 
中尾先生には、広報誌「厚生労働」7月号で「強迫性障害・不安障害」について詳しく解説いただいていますので、ぜひご覧ください。また、「強迫性障害」「不安障害」の症状や治療等については、「みんなのメンタルヘルス総合サイト」などでも分かりやすくご紹介しています。

月刊「厚生労働」2022年7月号(日本医療企画)

■みんなのメンタルヘルス総合サイト(「強迫性障害」について):

■みんなのメンタルヘルス総合サイト(「不安障害」について):

■みんなのメンタルヘルス総合サイト(相談先について):
こころの健康や医療について、全国にある保健所や保健センター、精神保健福祉センターにて、幅広く相談を受けつけています。

■世界メンタルヘルスデーJAPAN特設サイト:
毎年10月10日は「世界メンタルヘルスデー」です。日本では、2020(令和2)年からイベントの開催やメッセージの掲載をしています。

【本記事冒頭の作品について】
「こころの宅配便」をテーマとした作品の提供を厚生労働省から依頼し、多摩美術大学の伊藤絵理菜さんに日本画の技法を用いて作成いただきました。