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厚労省初となる「デザイン専門官」を募集。デザインの力で広報改革を推し進めてくれる方、ぜひご応募ください。

こちらの募集は終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。

皆さま、お疲れさまです。
分かりやすい広報指導室(通称:か室)の越水です。

現在厚労省では、以下のスキルを持つ人材を募集しています。

  • 省全体のデザイン強化と各部署へのデザイン支援を同時並行でできる

  • 施策の意図やポイントを汲み取り、それをご自身の手で分かりやすいカタチに落とし込むことができる

  • 関係者と円滑にコミュニケーションを取り、一歩一歩粘り強く物事を前進させることができる



この、厚労省の長い歴史の中で初の試みとなる「専属デザイナー」の公募について、記事の前半では、「デザイナーを公募するに至った経緯」、「入省後、担っていただく具体的な業務」、「厚労省で活躍できる人物像」について、私からご説明させていただきます。

そして、記事の後半では、外部アドバイザー(参与)として2020年以降デザイン全般についてご支援していただいている東海大学の富田誠准教授から「厚労省のデザインを支援することになったきっかけ」、「なぜ厚労省にデザインが必要なのか」、「デザイン専門官に期待すること」についてお話しいただきます。

左から、野口広報戦略推進官、小園広報室長、越水

デザイナーを公募するに至った経緯

2020年の1月から始まった厚労省改革(人事改革、業務改革、広報改革、職場改善)の一つの柱である「広報改革」ですが、広報室と分か室職員が中心となって取り組んできた結果、少しずつ成果が出始めています。

その中で、広報改革の強化ポイントの一つとして掲げている「デザイン力の強化」については、今後さらなる改革を進めるため、抜本的な強化が求められています。

そのため、厚労省のデザイン戦略の立案から実行までを一気通貫で担っていただける常勤・専門職のデザイナーを募集することとなりました。

入省後、担っていただく具体的な業務

今回採用されるデザイナーの方は、「デザイン専門官」という肩書きとなり、分か室に配属されます。そして、民間出身者で構成される広報チームの一員として、広報業務全体の流れを1~2か月で把握していただきます。(分か室は広報室の一角にあるため、広報室職員との連携も日常的にあります)

その後、大きく分けて以下の3つのことについて取り組んでいただきます。

1.デザイン基盤の構築
職員共通の指針となるデザインガイドラインの作成(ユニバーサルデザインややさしい日本語も含む)、若手・中堅職員がすぐに活用できるA4チラシのひな形作成、パワーポイント統一様式の拡充(カラーパレットを含む)など、「広報改革」を推進する上で必須となるデザイン基盤の構築。

2.デジタルPR/広告で使用する素材の作成
近年、ますますニーズが高まっているデジタルPR/広告で使う各種素材(バナー、SNS(X、Facebook、LINE、note、YouTube)用の画像、ウェブサイトなどで使用するダイアグラム、ピクトグラム、表などの「インフォグラフィック」)の作成。

3.国民向け広報素材の添削・修正提案
各部署の職員がパワーポイントで作るチラシやリーフレット、ポスターなどのブラッシュアップ。(厚労省では、外部委託だけではなく施策を担当する職員が国民向けのチラシやポスターを手作りすることが多々あります・・・)

※PowerPointでの業務の比重がいちばんありますが、必要に応じてPhotoshop、Illustratorなども使用します
※ご本人の希望・適性等により、デザイン力向上研修や非常勤イラストレーターの統括を行っていただく可能性もあります。

厚労省で活躍できる人材とは

――やりがいとキャリア戦略

デザイナーの方に取り組んでいただく具体的な業務内容について先ほどお伝えしましたが、正直なところ「守備範囲が非常に多岐にわたっている(わたり過ぎている・・・)」と、不安に感じた方がいるかもしれません。

また、今回公募しているポジションは「任期付き」であることも気がかりな点だと思います。

この2つの要素(「守備範囲の広さ」「任期付き」)については、厚労省に限らず「行政機関の広報強化」を考える上で非常に大きな課題(壁)だと私は思っています。

国家公務員は、「職員数を増やす」ことに対する高いハードルが元々あることに加え、今回のデザイナーに限らず「広報」や「マーケティング」分野に特化した、いわゆるジョブ型の人材を採用する場合、どうしても「任期付き」とせざるを得ない厳しい現実があります。

知見の蓄積がそのまま組織の資産として積み上がっていくこれらの専門分野。そのプロたちが数年で離職してしまうという、民間企業の方々が驚愕するこの「仕組み?」は、長期的な視点をもって行政広報を強化したいと考える立場からすると、非常に悩ましい問題として常につきまとっています・・・。

しかしながら、これら2つの要素は、見方を変えると次のように言えるのではとも思います。


これまで厚労省には、デザインのプロが常駐していませんでした。

そのため、厚労省の政策を国民にとって分かりやすいデザインに落とし込んでいく企画力および実行力さえあれば、厚労省に在籍する「3年」という限られた時間の中で、この重要&未開拓の分野をご自身の手で切り開き、行政デザインをダイナミックに強化・一新させることが可能であると。

「厚労省の広報物を国民の皆さんにとって分かりやすいものに変えた」

という実績を積める職場であるということは、キャリアアップを目指す方にとって、次に繋がる貴重な環境であると言えるのではないかと思います。(それはすなわち、ご自身のキャリアプランを考える上で、厚労省は有力な転職先(選択肢)の一つとなり得るのではないでしょうか?)

ちなみに、デザイン専門官と同じく、分か室の責任者を務める私や最初の写真に写っている野口広報戦略推進官の任期も、あと数年です。

つまり、今回デザイナーとして着任される方は、我々と一緒に「広報改革」という大きなプロジェクトを3年の間 できるところまで進めていき、後任にその「バトンを託す」という重要な役割を担うこととなります。

これは私の主観ですが、限られた時間・人材・予算の中で、知恵を絞り、どこまで改革を積み重ねていけるのか?と、日々自問自答を重ねながら「挑戦者」として働けるという点が、このポジションの醍醐味なのではと思っています。


――デザインスキルに加え「柔軟性と粘り強さ」も大事

今回公募している「デザイン専門官」は、我々民間広報チームや各部署の職員と密に連携し、デザイン分野を牽引していただくポジションのため、デザインに関する専門知識を持っていることが前提となります。

しかし、厚労省で力を十二分に発揮するためには、豊富な知見に加えて、もう一つ重要な要素が必要です。

それは、「柔軟性と粘り強さ」です。

厚労省は、霞が関にある本省だけで約4,300人の職員がおり、地方を含めると33,000人以上の職員が働く巨大な組織です。

数が多ければ、当然いろいろな考え方や思いを持つ方がいます。

そのため、「べき論」にこだわってしまうタイプよりも、その時の状況や事情を踏まえてある程度柔軟に対応しつつも、その中で最善なことを粘り強く追求できる思考の持ち主だと、入省早々から活躍できると思います!

私からの説明は以上となりますが、国民目線に立って「デザイン」で行政をよりよくしたいという意欲をお持ちの方からのご応募、お待ちしています!


それでは、ここからは、厚労省のデザインアドバイザーである富田先生のお話となります。

厚労省のデザインを支援することになったきっかけ

皆さん、こんにちは。東海大学 教養学部芸術学科の富田と申します。

私が厚生労働省のデザイン支援に携わったきっかけは、公務員が自らデザインするための方法について研究をしていたことがきっかけでした。

行政機関は私たちの生活や仕事に必要とするさまざまな情報を大量に発信しています。しかし、それらを全て広告代理店やデザイン制作会社に発注していては時間も予算も足りません。

どうすれば、行政組織の中に持続的に質の高いコミュニケーション・デザインをする仕組みを持たせることができるか、デザインの研究者として考えていました。例えば、以下の取り組みは、政策資料づくりにおいて、公務員自らがデザインする、つまり、当事者デザインという観点から研究したものです。

※公務員の政策資料の視覚化における当事者デザイン支援の研究 日本デザイン学会 第64回春季研究発表大会

これらの取り組みを厚労省で広報改革をされていた方が見つけ、私に声をかけてくださいました。

東海大学 教養学部芸術学科 富田准教授

なぜ厚労省にデザインが必要なのか

それから間もなくして始まったのが、コロナ禍でした。国民はもちろん、メディアも地方自治体も厚労省の情報を頼りにしていました。

このコミュニケーションをどうやって滑らかにすることができるのか。覚悟を持って、このプロジェクトを始めました。

まずは、省内の資料制作に関する調査をはじめました。そもそも省内ではどのようなタイプの資料が作成され、どのような目的で、誰がどのように制作をしているのか。大量の政策資料を分析・整理しました。
加えて400名以上の方にアンケートを行い、資料制作の課題点などを明らかにしていきました。

厚労省で制作されるパワーポイント資料の分類


パワーポイント資料の課題

そして、これまで統一されていないかったパワーポイントの雛形が作られていきました。文章や図版を減らさず、これまでの制作フローに影響が出過ぎないようバランスを考えデザインしました。

表紙のテンプレート


また、もう一つ取り組んだのが、厚生労働省のロゴタイプのリニューアルでした。旧ロゴタイプは文字が細く、小さいサイズで配置した時の可読性が低いことから、新たに制作をすることになりました。

このように、省内にはデザインを必要とするモノ・コトがたくさんあるはずです。

デザイン専門官に期待すること

コロナ禍で明らかになったように、厚労省の情報は私たちの生活と仕事に直結する大切な情報を発信しています。厚労省は、医療、労働、雇用、年金、福祉など、私たちが生まれてから最期の瞬間までを支える役割を担っています。だからこそ、よりよく伝えることが必要であり、そこにデザインの力が求められると思うのです。

もしかしたら、一般的なデザイン制作会社や事業会社のデザイン部門におけるデザイン制作とは異なるものが求めらることもあるかもしれません。

例えば、広報物の制作を依頼されたときはもちろん自分で作り上げます。それと同時に、依頼した担当者、あるいは次年度の担当者も編集できるよう配慮して作る必要があるかもしれません。自分が手がけるものだけをデザインするのでなく、厚労省全体がデザインできるようになることを目指すからです。

それは言い換えれば、デザインする組織をデザインすることでもあります。

デザインとはいつの時代も社会や技術の変化に応じて形を変えてきました。厚労省で初めて募集するデザイン専門官の仕事は、新しいデザインの領域を開拓しうるものだと思います。

ご応募、お待ちしております。