「電子処方箋」を伝えたい!広報担当職員の奮闘記
初めまして。
医薬局総務課 電子処方箋サービス推進室の佐久間と申します。
私は2013年に入省し、現在は主に「電子処方箋」の周知広報を担当しています。
この記事では、誰かに伝えることの難しさを痛感し、どうやったら国民の皆さんに伝わるのか、これまで工夫を重ねてきた取り組みの記録、そして私の思いをお届けしたいと思います。
「伝えること」の難しさと向き合う日々
皆さんは、「電子処方箋」を知っていますか?
まだご存じない方のほうが多いと思います。
皆さんが医療機関を受診し、薬が必要になると処方箋が発行されます。
この処方箋を持って薬局へ行き、調剤された薬を受け取ります。
これまで、この処方箋は紙でしたが、これを電子化しようというのが電子処方箋です。
医療機関が発行した処方箋は、電子処方箋管理サービスにデータとして登録され、皆さんが訪れた薬局でデータを取り出して調剤を行うため、処方箋の紙を持ち歩くことがなくなります。
「電子処方箋を全国の医療機関・薬局で使えるようにする」というのが私たちの目標です。そのためには、まず、医療機関・薬局が必要なシステム改修などをして電子処方箋への対応を可能にすること、そして患者さんが実際に使ってくれることが重要です。
では、患者さんに使ってもらうためにはどうしたらよいか。
まずは、
① 電子処方箋が始まったこと
② 使いたいと思うメリットがあること
③ 実際に使うためにはどうしたらよいか
この3点を伝えることです。
そのために、「知ってほしい電子処方せんとマイナンバーカードのこと」(動画)、「使ってみよう電子処方せん」、「電子処方せんの利用ステップ」(リーフレット)などの作成に取りかかりました。
※A3で印刷し、二つ折りにするとA4サイズのリーフレットとしてお使いいただけます。
しかし、最初に頭を悩ませたのは、行政官として普段使っている用語と広報における用語、そしてデザインの違いです。
リーフレットでは、伝えたいことが多く、誌面に情報を詰め込み過ぎる癖が抜けませんでした。また、普段は細部まで正確に記載することに注意を払いますが、国民の皆さんに伝える場合は、あまり細かくしすぎると「見たくない、読みたくない」ものになってしまうことに気がつきました。
正確な情報になるように直して、すっきりするように添削して、読みやすくなるようにとさんざん考えた結果、元の文書に近いものがよかったということがあったりと、試行錯誤の連続でした。
次に頭を悩ませたのは、作ったものをどこで見てもらうか、それに合う媒体(メディア)は何かを探すことです。
まずは、電子処方箋を導入した医療機関・薬局が患者さんに説明しやすくなるよう、紙のリーフレットを作成しました。医療機関・薬局に置いてもらい、患者さんが手にとり、目にしてくれることをめざしました。
また、自分が医療機関や薬局に行った際、待合室でテレビがついていると何気なく見ていることを思い出しました。この経験から、動画を待合室で流してもらえるよう、静音でも分かるように字幕をつけたり、動画を流せない施設用にデジタルサイネージ用のものも作成したり、使ってもらえるように工夫を重ねました。
最大の難関は、メリットを伝えること
そもそも、電子処方箋を選択することで患者さんにとって「何が」メリットになるかを伝えるのが最大の悩みでした。
電子処方箋のメリットは、医療機関・薬局で処方・調剤された薬の情報がリアルタイムに登録されるため、他の医療機関・薬局に行っても、患者さんが今飲んでいる薬の情報を医師や薬剤師がデータとして確認できることです。
これにより、患者さんがお薬手帳を忘れたり、飲んでいる薬の記憶が曖昧なときでも、重複投薬や併用禁忌を避けられ、医療安全につながります。重複投薬や併用禁忌の可能性がないかを、医療機関・薬局がシステム上でチェックできる機能も備えています。
しかし、このメリットを患者さんに直接感じてもらうのは、なかなか難しいものです。
また、紙の処方箋を持っていくことに慣れているなかで、紙を持参しなくてよいことのメリットをどう分かってもらうかにも悩みました。
そこで動画では、医療機関・薬局の利用が多い、比較的高齢の方向けのメリットとして、処方箋に加え、健康保険証、高齢受給者証、限度額適用認定証などをマイナンバーカードにかえることができるため、忘れ物の心配も減らせるということもお伝えしています。
また、その中で、メリットだけを書くのではなく、実際に患者さんがどうやって電子処方箋を使うのかを伝えることが必要だと気がつきました。
電子処方箋の使い方の手順は以下になります。
1)電子処方箋に対応した医療機関でマイナ受付時または診察室などで医師に電子処方箋を希望することを伝える。
2)電子処方箋に対応した薬局でマイナ受付または引換番号を伝えて調剤を受ける。
なんとなくでも、あらかじめ手順が分かると不安感が薄れるのではと思い、動画の中で簡単に触れているほか、リーフレット、電子処方箋の国民向けウェブサイトで、一つ一つの動きを解説しました。
手順を細かく書いたことで、手順が多く面倒なものと思われないよう、文章はできるだけ簡単にすることを意識しました。
困ったときこそ役に立つ、電子処方箋
着任後、患者さん向けの周知広報に力を入れてきましたが、私のようにあまり医療機関に行かない人向けの周知広報が不足していたことに気がつきました。
言葉だけでも知っていると、実際に医療機関を受診した際に電子処方箋を選択しやすくなるのではないかと思い、厚生労働省SNSでの投稿や、電子処方箋の運用開始1年となるタイミングで特設ページの開設に取り組みました。
SNSは、限られた文字数で何を伝えるのかが大切です。投稿後の反応から、もっと詳細にしたほうがいいのではと迷うこともありましたが、まずは「電子処方箋」という言葉を多くの方に知ってもらうことだ、と初志貫徹で当初の目的からブレないように意識しています。
特設ページでは、実際に起こり得るエピソードを紹介しながら、電子処方箋を利用していて良かった、と思っていただける内容になるよう意識しました。
例えば、子どもが体調を崩したとき、普段はお母さんが医療機関に連れていくご家庭があったとします。ある日、子どもが急に発熱し、お父さんが医療機関に連れていくことになりました。しかし、かかりつけの病院は休診で別の医療機関へいくことに。そこで子どもが普段飲んでいる薬を聞かれるのですが、お父さんは答えられず、ピンチ!しかし、普段から電子処方箋を利用していたので、問題なく処方してもらうことができました。
このように、皆さんが「自分にも起こり得る」と思ってもらえるような事例を意識して掲載しました。
ここでも頭を悩ませたのは、ターゲットとそれに合う広報手段です。電子処方箋は特定の年齢の利用者に絞り込めるものではないため、ターゲット層を限定してそれに合う効果的な手段を考えるのが難しいことにも悩みました。
また、電子処方箋は高齢者など高年齢層の方にも利用していただいているので、今後は新聞の誌面なども活用したさまざまな周知広報を考えていきたいと思っています。
まずは皆さんに「電子処方箋」という言葉を知ってもらい、対応医療機関を受診した際には一度使ってみてもらうことで、電子処方箋の利用が自然なものとなること、そして処方・調剤情報の蓄積により、皆さんがより安心・安全に医療を受けられることを目指して、これからも情報発信を続けてまいります。