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こころの宅配便、始めます~こころの専門家と届けるちょっとラクにすごせる言葉~【初回準備号】

こころの宅配便を企画した思い


<執筆者>

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田中裕記
社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課 課長補佐
(心の健康支援室PTSD専門官併任)

わたしは、2021年4月に厚生労働省に入省するまでの間、心理職・精神科医として精神障害を有している方やメンタルヘルスの不調を抱えておられる方々の心理支援・治療に携わってきました。
不調を感じて相談にいらっしゃる方から、入院での治療を必要とされる方まで、さまざまな当事者やご家族、周囲の方々と接する中で、また、厚生労働省の職員として予防や普及啓発といった様々な施策に関わる中で、精神障害やメンタルヘルスの問題は、「治療」だけでは解決するものではないと改めて考えるようになりました。

ここ数年で精神障害やメンタルヘルスの不調という言葉を見聞きする機会が増え、これを読んでいる方の中にはご自身や身近な方が当事者という方もいると思います。
精神障害やメンタルヘルスの不調という言葉に、みなさんはどのような印象をお持ちでしょうか?
「自分には関係ない」「自分は大丈夫」と思う方、
変調を感じて不安を抱えながら「対処方法がわからない」という方もいるかもしれません。

メンタルヘルスや精神障害、そして個別の疾患が知られるようになった一方で、当事者の方が日常生活を送る上で「精神障害を有している」とオープンにしづらい環境や、「精神障害のことはよくわからない」「怖い」といったイメージ、精神科病院などの精神科に関連する機関に対する心理的な壁がある、というのが現実かもしれません。

こころの不調とはどのようなことなのか
様々な気持ちが生じたとき、どのように自分と向き合っていくのがよいのか

自分の「こころ」を大切にすることや、周りの方々の「こころ」にちょっとした気配りをするといった、一歩につなげてほしい。
そうした思いから、この「こころの宅配便」を企画しました。

厚労省が目指す社会

厚生労働省では、精神障害を有する方やメンタルヘルス上の課題を抱えている方を含め、誰もが安心して自分らしく暮らせる社会になるよう取り組みを進めています。

そして、
自分のこころを大切にできるような、
こころの不調があるときに安心して相談できるような、
さらに、
周りの人にこころの不調があるときに、自然にあたたかく接することができるような、
そんなつながりのある社会を目指しています。

そうした社会の実現のためには、こころの不調や病気について、実際にそうなったときに感じる気持ちも含めて、理解を広げていくことも大切です。

「こころの困りごと」を抱えている方、周囲にそのような方がいる方、これから当事者としてこころの問題に向き合うかもしれない方、「こころ」の分野に興味のある方など、さまざまな方々に向けて、専門家からの言葉をお届けする「こころの宅配便」を始めます。(第1回は7月中旬に更新予定)。

今回は初回準備号として、より多くの方にご興味をもっていただけるよう、こころの不調にまつわるデータをご紹介します。

<執筆者の略歴>
九州大学大学院人間環境学府修士課程修了、富山大学医学部医学科卒業後、九州大学病院、福岡県立精神医療センター太宰府病院などで精神科医として勤務。
精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師。

約5人に1人の方が、
何らかの精神障害を経験している

以下の図は、何らかの精神障害を経験しているかどうかと、精神障害の経験がある方のうち、受診や相談の経験があるかどうかを示しています(日本国内で20歳から75歳までの方を対象とした調査結果)。

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出典:世界精神保健日本調査セカンド「精神障害等の有病率および受診行動」

研究の結果からは、約5人に1人の方が、何らかの精神障害を経験していることが明らかになっています。
この問題を他人ごとのように感じていた方も、この数字を見て、今までよりも「自分ごと」と感じられるのではないでしょうか。

さらに、不調を感じた方のうち、約4人に3人は受診や相談の経験がないと答えています。
理由として、専門家に心を開いて話すことへの難しさや、専門家を受診したことを友人に知られることの恥ずかしさなどが多く挙げられました。

あなたがこころの不調を感じたとき、
まずは、その不調に気づいてほしい。
そして、相談や受診などの行動に移してほしい。

周囲でこころの不調を感じていそうな人がいるとき、
まずは、その不調に気づいてほしい。
そして、その人を支えてほしい。

こうした行動を皆さんが取りやすくなることを願い、「こころの宅配便」という種をお届けします。あなたの「こころ」という土壌に撒いて、育てていただき、そしてできれば、周囲の方にもおすそわけしながら、「誰もが安心して自分らしく暮らせる社会」作りに皆さんも参画いただければ幸いです。不定期配信ですが、どうぞ宜しくお願いします。


【関連情報】
■みんなのメンタルヘルス総合サイト(こころの病気を知る)
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/index.html

■みんなのメンタルヘルス総合サイト(相談先について)
こころの健康や医療について、全国にある保健所や保健センター、精神保健福祉センターにて、幅広く相談を受けつけています。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/consult_6.html

■世界メンタルヘルスデーJAPAN特設サイト
日本では、令和2年からイベントの開催やメッセージの掲載をしています。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/mental_health_day/index.html

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