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【レポ】「こども霞が関見学デー」こどもに届けたい、施策がある。

はじめに


こんにちは、カケル・プロジェクト(※)メンバーの小畑です。

霞が関の府省庁では、例年夏休み中に、「こども霞が関見学デー」というイベントを開催し、こどもが実際の庁舎で楽しく施策を学ぶ場を提供しています。ここ3年はコロナ禍で中止やオンライン開催となっていましたが、今年の8月2・3日、4年ぶりにリアル開催となりました!

そんなこども霞が関見学デーの厚労省会場に、わが家のシャイボーイ2歳児&おっとりどっしり0歳児とお邪魔してきました。「未来を担うこどもたちに厚労省は施策をどう伝えていくのか?」をテーマに、限られた足取りではありますが、年金局、社会・援護局、障害保健福祉部の3企画を、担当者のインタビューを交えつつレポートします。

筆者の小畑です

(※)カケル・プロジェクトとは
広報活動に興味・関心を持つ、意欲あふれる若手・中堅職員で構成されたチームによる「広報改革加速化プロジェクト」の通称です。省内公募で手を挙げた有志職員が、厚生労働省noteの執筆や省内広報等に携わっています。

令和5年度 夏休みこども見学デーポスター

1.リアル クイズノック塾!:~伊沢拓司さんと考える私の将来のキャリアプランと年金~(年金局)

TVの人気者をお招きし、本格的なクイズイベント

まずは、外部会場の年金局のイベントへ直行。「東大王」を毎回欠かさず見る筆者も、伊沢さんとどんなコラボになるんだろう?と興味深々で拝見させていただきました。

冒頭、沢山の親子の熱視線の中登場した伊沢さんは、併用するオンラインの視聴者にも投げかけながら、年金についてオープニングトーク。この中で小学生は?中学生は?大人は?と掛け合いつつ 、TVと変わらない軽妙な喋りで会場を沸かせました。

伊沢さんによるオープニングトーク

その後、伊沢さんから年金3択クイズを出題。4問勝ち抜き、最後にじゃんけんに勝った1名には伊沢さんからプレゼントがあるということで、会場は大盛り上がり。
クイズに全て勝ち残ったこどもたちと伊沢さんとのじゃんけん大会では、最後に文句なしのひとり勝ち。サイン色紙をゲットし、「すごいうれしい」と話していました。
 
私の正解率?教えられません(汗)。

優勝賞品のサインを掲げる伊沢さん

今回参加してみて、「楽しい」と学びのバランスが絶妙なイベントだったと感じました。

参加したこどもたちにはきっと夏休みの素敵な思い出になったと思いますし、「覚えたことを持って帰ってもらって、10年後や20年後に思い出してもらいたい」という伊沢さんのメッセージも心に届いたのではないかと思いました。

年金制度を親子で楽しく

企画について、担当した年金局総務課年金広報企画室の菊地英明係長にインタビューしました。

小畑(以下「小」):とても楽しく参加させていただきました!今回どうしてこのような企画に至ったのですか?

菊地(以下「菊」):従前からQuizKnockと年金クイズ動画でコラボしているのですが、過去三部作で210万回再生、高評価率も98%と好評をいただいています。そこで、こどもにも年金クイズイベントが効果的か、というところが発端です。

小:企画の狙いは何ですか?

菊:年金制度を親子で楽しく学んでいただくことが狙いです。

小:オンラインも併用していましたが、何か狙いはあったのですか?

菊:地方に住んでいる子が霞が関に触れる機会になると思いました。配信した動画を後日アーカイブするため、ライブ配信事業者を入れています。それによって、テレビのように効果音を入れることも可能になりました。

小:こどもたちの反応はどうでしたか?

菊:大盛況で、おもしろかったとの意見が大多数でした。サインは1枚じゃ足りないと言われましたね(笑)。

実は、伊沢さんとは事前打ち合わせしていません

小:伊沢さんのお話、必要な内容を網羅しつつ機知に富んでいてとても楽しかったです。どこまで事前に打ち合わせされていたのですか?

菊:伊沢さんとの事前打ち合わせはしていません。

小:えっ!!

菊:伊沢さんのほうがこどもと接していますから、こどもに何を語ったら伝わるか、むしろ我々が学ばせていただいています。職員は制度への愛情がある分、たくさん伝えたくなってしまうので、こどもにアプローチするためには、彼らのようなプロの力がとても重要です。

小:なるほど。有名人をお招きする効果ということですね。

菊:はい。こどもに人気の芸能人や、こども向けのYouTuberの力を借りると、厚生労働省のこども向け発信は変わると思っています。それと、大変多くの申し込みをいただき、告知の必要がなかったのもありがたい効果です(笑)。

こどもが楽しく学べるコンテンツを充実させたい

小:近年省庁も、SNS等のさまざまな媒体での広報戦略が重要になってきていると感じますが、年金局の広報は、QuizKnockさんとのコラボをはじめ、省内でも異色ですよね。

菊:動画作成のほかにBSの番組で年金を一から学ぶ特集を組んでいただいたり、大学での「年金対話集会」を行ったりしています。

年金局では、各課バラバラではなく「年金広報企画室」でまとめて各課の内容の広報を行っています。細かい内容については各課に問い合わせることにはなりますが、企画調整は一手に引き受けられますので、人手や予算などの面で効率がいいです。

小:今後のビジョンを教えてください。

菊:厚生労働行政は国民の生活に密着したもので、こどもの頃から知ることが重要です。しかし、具体的なサービスが多い一方で、その背景にある概念が抽象的で難しいことも多く、理解が難しいことから、楽しく学べるコンテンツの充実が重要であると考えています。高校生の家庭科で年金を取り扱うようになり、楽しく学べる教材の開発にますます力を入れていこうと思っています。魅力あるものを作りますので、期待していてください。

*会場で出題された問題より
Q.年金制度は西暦何年から開始された?
A:1942年 B:1951年 C:1973年 (こたえ:A)

日本年金機構とQuizKnockによる年金クイズ動画はこちら

2.むかしあそび体験(社会・援護局)

高齢者疑似体験はインパクトあり!


続いて、社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室の「むかしあそび体験」にお邪魔しました。筆者が3月まで所属していたこの課では、介護人材の魅力発信等事業を行っています。専門官の企画だよ、と上司からお勧めされていたこともあり、とても楽しみにしていました。

このブースは、あやとりや折り紙といったむかしあそび、高齢者疑似体験教材を用いた体験をして、スタンプがたまると介護福祉士クイズに挑戦できるというもので、みんなとても熱心に体験していました。特に疑似体験は、心にインパクトを残す貴重な体験ではないかと思いました。

高齢者疑似体験の様子

高齢者を身近に感じて

もっと詳しく聞くため、令和3年度に福祉基盤課福祉人材確保対策室に着任した、介護福祉士の藤野裕子人材確保定着促進専門官にインタビューしました。

藤野裕子 人材確保定着促進専門官

小:今回初めてこども霞が関見学デーに参加したと伺いました。この企画を通してこどもたちにいちばん感じてほしいことは何ですか?
 
藤野(以下「藤」):室では「介護の魅力発信等事業」として介護職の魅力を動画等にして発信しています。今回はこども霞が関見学デーへの参戦に当たり、日頃魅力を伝えている日本介護福祉士会の皆さんと、とても楽しい企画をすることができました。
 
今回の企画では、介護福祉士という職業について知識を深めていただくのはもちろんなのですが、おじいちゃんおばあちゃんの遊びを体験することで、おじいちゃんおばあちゃんも昔はこどもだったという気付きを得て、そして高齢者を身近に感じてもらいたいというのがいちばんの思いです。高齢者へのリスペクトなくして介護福祉士という職業は成り立ちません。おじいちゃんおばあちゃんに優しくしてね、というのが原点にしていちばん大事だと思います。
 
小:体験するこどもたちを見てみてどうでしたか?

藤:こちらが想像していた以上に楽しんでくれていますね。特に高齢者体験が興味深いようで、積極的に挑戦しています。保護者の方も新鮮そうにご覧になっていて、将来よろしくねーと声を掛けたりしているようです。親子の会話も通して、高齢者をかなり身近に感じてもらえているのではないでしょうか。

こどもはすごく素直な反応をしてくれる

疑似体験を担当していた介護福祉士会の田村さんにもお話を伺いました。
 
小:本日企画をやってみていかがでしたか?

田村(以下「田」):予想よりもはるかに多くのこどもたちがきてくれていて、嬉しい悲鳴を上げています。みなさんとても興味を持ってくれているようです。
 
小:疑似体験にきてくれたこどもはどういった反応ですか。

田:すごく素直な反応をしてくれていると思います。手足の重りでうまく歩けない・目も見えづらいといった状況に、「きつい~」と悲鳴を上げています。また、想定としては対象は小学生くらいと考えていたのですが、小さい子も積極的に体験してくれていて嬉しいですね。

介護福祉士クイズの様子

介護を自分ごととして考えるきっかけを作りたい

小:未来を担うこどもたちに今後どういったアプローチをしていきたいですか?

藤:今日のように自然と介護や介護の仕事に触れてもらえるのはとても良いと思いました。お子さんも保護者の方もとても楽しんでおられました。高齢者疑似体験をして「きつかった」と言うお子さんにお母さんが「おじいちゃんおばあちゃんには席を譲ってあげないとね」などと会話をされる様子を見ました。

多世代が交流する機会が少ない人も多いと思いますので、まずは身近に感じて自分ごととして考えるきっかけを作れたらと思います。

3.ほじょ犬・ほそうぐについて、学んでみよう!(障害保健福祉部)

車椅子体験に長蛇の列!

最後に、障害保健福祉部企画課自立支援振興室の「ほじょ犬、ほそうぐについて、学んでみよう!」に行きました。

 国立障害者リハビリテーションセンター(国リハ※)とのコラボにより初めて実施された補装具の企画では、車椅子やボッチャという障害者スポーツ、「ロービジョン」(低視力)の体験ができました。なかでも車椅子体験には長蛇の列ができており、みんな器用にスラローム(進路転換コース)を抜けていました。筆者が興奮したのは、本物の競技用の義足です。我が家の2歳児もボッチャに興じていました!
(※障害者のリハビリテーションに関する国の施設等機関)

車椅子スラローム体験

補装具を使う努力を知り、お互いを尊重してほしい

補装具企画について、令和4年度に障害保健福祉部企画課自立支援振興室に着任した、義肢装具士の徳井亜加根福祉用具専門官に伺いました。

徳井亜加根 福祉用具専門官

小:会場はかなり盛り上がっていましたね!徳井さんからみて一番盛り上がっていたのはどれでしたか?

徳井(以下「徳」):盛り上がったのは車椅子でしょうね。こどもは実際に動かしてみるのが好きです。今回車椅子は、車椅子シーティング協会にお願いして、電動車椅子を含む11台ご用意いただきました。2日連続で来てくれた子もいたくらいです。

小:企画を通して伝えたかったことは何ですか?

徳:補装具というものがあっても、それを使いこなすためには多くの練習が必要であるということでしょうか。例えば、車椅子競技は健常者でもプレイできますが、多くの健常者の方は思ったようにプレイできません。

そこで初めて車椅子を使用している方を尊敬のまなざしで見るといったこともあります。障害のある方が訓練で得た能力を知って、単に「障害=できない」と考えるのでなく、お互いを尊重するようになってもらえればと思います。

興味をぶつけてくれる、きらりと光る子ばかりでした

小:こどもの反応や手応えを教えてください。

徳:今回、能動義手と筋電義手の比較体験も用意しましたが、義手について自分でまとめた資料を持参してくれたお子さんがいました。また、スポーツ用義足が日常用義足より義足長が長い理由を一発で当てたり、こんなにたわむものを装着するのは身体に悪いのではないか、と鋭い質問をするお子さんもいて、きらりと光る子ばかりでした。

ロービジョンについてはなかなか体験の機会がないと思いますが、いろいろな眼鏡をかけたり、白杖を使って歩いたりと、多くのお子さんが体験してくれて、国リハ病院眼科チームの皆さんがとても喜んでいましたよ。

ロービジョン体験

このような機会を活用し、将来に向けた人材育成も

小:徳井さんは、過去国リハにいらっしゃったときも、こどもと接するイベントがあったのではないかと思うのですが、なにか過去の経験から生かせたものはありましたか?
 
徳:国リハにいたときには、地元所沢市の小学校への出前授業の担当をさせてもらい、大勢のこどもたちに囲まれて質問攻めになるというのを経験していたので、それは大いに役に立ちました。こどもたちが補装具というものに興味津々だということも出前授業で学びました。
 
だからこそ、たくさん見て、触って、体験してということができるイベントにしたいと思いました。真っ先に浮かぶ車椅子や義足だけでなく、ロービジョンや義手など、さまざまな補装具を用意し、知ってもらうということも意識しました。

筋電義手の体験

小:これからこどもにどのように補装具のことを伝えていきたいか、なにか今後の展望があれば教えてください。

徳:私が義肢装具士だからというのもありますが、もっと「作る」ということにフォーカスした広報もいいなと思っています。出前授業でも、児童が自分の指モデルを作ってとても喜んでいました。 
 
また、今回やってみて、補装具について素晴らしい知見を披露してくれたお子さんがたくさんいましたので、そうした優秀な研究をしているお子さんには、こども霞が関見学デーの企画に限らず、国リハなどの現場の視察に招待するという企画もいいなと思いました。こどもの興味関心を伸ばしつつ、将来に向けた人材育成に有効だと思います。いずれにせよ、来年度はもっとパワーアップした企画にしたいと思っていますので、楽しみにしていてください。

体験を通じて

生活に身近だからこそ、こどもにしっかり伝えたい厚生労働行政。
 
こども霞が関見学デーを切り口に、各部局が行うさまざまなアプローチのほんの一端をご紹介させていただきました。担当者は皆さん、楽しく学んでもらえるよう心をこめており、今回取り上げた以外にも、大臣とお話しするコーナーなど、多くの企画を用意しています。
また、2歳0歳児連れとしては、想像どおりバタバタはしたものの、庁舎内に授乳室や休憩室の用意があったので、その点かなり安心してまわれたことをお伝えさせていただきます。
 
一親としても、体験は大きな財産だと思いますのでまた連れてきたいですし、一職員としても、日頃大人と仕事をしていると、年に一度、庁舎がこどもの声で賑やかになるこの日が大変楽しみです。厚生労働行政を身近に感じていただけるよう、今後も工夫してまいりますので、来年度も親子で楽しくお越しください!

廊下で黄昏れる息子です

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